フェイスブックの隠された研究結果と、守られない「透明性」という約束

膨大な数のユーザーの個人情報や行動履歴などを収集していることで知られているフェイスブック。これらのデータに基づく研究結果から明らかな問題の可能性が指摘されていたにもかかわらず、対処していなかったことが明らかになった。こうした事実は公表されず、約束してきたはずの透明性は実現できていない。そうした事実から何が読み取れるのか──。『WIRED』US版エディター・アット・ラージ(編集主幹)のスティーヴン・レビによる考察。

TEXT BY STEVEN LEVY

WIRED(US)

現時点でおよそ40億人もの人々が、Facebookやその傘下のサービスであるInstagramやWhatsAppを利用している。フェイスブックは、これらのユーザーの個人情報やサービス上でのあらゆる行動履歴のほか、サービス外での行動も含む膨大なデータを保有している。

フェイスブックは早くから、こうした前例のない規模の情報の価値を理解していた。2006年にはデータサイエンティストのジェフ・ハンメルバッハーを採用し、データを効率的にマイニングするためのインフラを構築した。その後継システムがいま、何百人もの研究者の“遊び場”となっている。

通常、これらの研究者による何千もの社内研究や実験の結果が表に出ることはない。ユーザーが目にする製品に自らがどのような影響を与えているのか、あるいは与えていないのかについて、フェイスブックはあまり透明性をもって開示していないからだ。

ところが、このほど研究者がリークした内部プレゼンテーションを主な根拠とするセンセーショナルな連載記事が『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載されたことで、フェイスブックのデータ専門家たちが注目されることになった。

例えば、フェイスブックのコンテンツルールから除外されたとみられる何百万人もの人物が記載された秘密のホワイトリストの存在が示唆されている。また、フェイスブックがプラットフォーム上での幸福度を高めるために構築したアルゴリズムが、実際には人々をより怒らせてしまったことが暴露されたのだ。

おそらく最も衝撃的だったのは、何百万人もの10代の少女たちがInstagramを利用することでセルフイメージに悪影響を受け、彼女たちの精神的な健康が脅かされているという研究結果である(タイミングが悪いことに、Instagramのトップを務めるアダム・モセリはこの記事が公開された夜、ハーレクインのクローゼットから盗んだようなタキシードで「METガラ」のレッドカーペットを歩いていた)。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、こうした明らかな“赤信号”の存在にもかかわらず、マーク・ザッカーバーグと彼のブレーンが問題に対処しないことを選択したのだと告発している。少なくとも、世間の関心が非常に高いFacebookの情報が社内にとめ置かれていたのだ。

守られない「透明性」という約束

ここでフェイスブックの研究について考察する必要がある。わたしは同社の研究者の何人かとオフレコとオンレコの両方で話したことがあるが、その人柄と献身さには感銘を受けた。

「フェイスブックの研究者たちをどこかの大学に入れれば、エリートだらけのデータサイエンス学部ができるでしょうね」と、スタンフォード大学法科大学院教授のナサニエル・パーシリーは語る。彼はフェイスブックのデータを公開する試みでこれらの研究者たちと緊密に協力してきたが、必ずしも成功したわけではない。

熱意ある研究者たちは、自分たちの研究がソーシャルメディアの真実を解き明かし、それによって会社が問題に対処し、何百万人ものユーザーの生活を改善できると信じている。一方で、Facebookの機能をひたすら向上させることに満足している人もいる。

また、研究者たちの仕事にはファウスト的な側面もある。というのも、何十億人もの人々の行動を記録した前例のないアーカイヴ、つまり多種多様なデータにアクセスできるのだ。

そのトレードオフは、研究者たちの仕事が独占的であるということである。研究者が成果を公表することもあるものの、基本的には社内にとどまることになる。