【主張】ノーベル平和賞 強権体制跋扈への警鐘だ - 産経ニュース

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ノーベル平和賞 強権体制跋扈への警鐘だ

世界で強権体制が跋扈(ばっこ)し、民主主義の根幹をなす報道と言論の自由が脅かされている。この現実に対する強い警鐘にほかならない。

今年のノーベル平和賞が、フィリピンとロシアのジャーナリスト2人に授与されることが決まった。ジャーナリストの平和賞受賞は第二次大戦後で初めてである。

フィリピンの受賞者、マリア・レッサ氏はニュースサイト「ラップラー」を率いる。ドゥテルテ政権の超法規的な麻薬撲滅作戦で市民に多数の死者が出ている実態を報じた。SNS(会員制交流サイト)がフェイクニュースの拡散や世論操作に利用されることの危険性も訴えた。

ロシアのドミトリー・ムラトフ氏は、調査報道でプーチン政権の闇に切り込んできた独立紙「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長だ。同紙ではこれまでに記者ら6人が殺害されている。ムラトフ氏は受賞について、「言論の自由を守るために死んでいった同僚たちの功績だ」と語った。

20年以上にわたってロシアの実権を握るプーチン大統領は、昨年の憲法改正で2036年までの続投を可能にした。反体制派や報道機関への弾圧は激しさを増している。プーチン氏は、今回の平和賞が、自らへの痛烈な批判であると認識すべきだ。

ノーベル賞委員会は受賞する2人について「民主主義と報道の自由が逆境に直面する世界で、理想のために立ち上がる全てのジャーナリストの代表だ」とした。世界を見れば、中露を筆頭とする強権体制の暗雲が張り出し、報道と言論が各地で封殺されている。

香港では6月、中国政府への批判を恐れずに独立報道を貫いた蘋果日報(アップルデイリー)が休刊に追い込まれ、編集幹部らが相次いで逮捕された。

ミャンマーでは2月、国軍がクーデターで実権を掌握し、抵抗する市民ら1千人以上が殺害された。民間の報道機関は軒並み免許を剝奪された。アフガニスタンでは8月、イスラム原理主義勢力タリバンが復権し、やはり報道の先行きが強く懸念される。

日本をはじめ自由と民主主義を信奉する国々は、こうした現実から目を背けるべきでない。今回の平和賞を機に、圧政と戦う人々への連帯と支持を改めて確たるものとしたい。