海遊館diary

「くちばしが美しい」という名のエトピリカ

全身真っ黒な綿羽に覆われたエトピリカのひな=8月10日撮影(海遊館提供)
全身真っ黒な綿羽に覆われたエトピリカのひな=8月10日撮影(海遊館提供)

みなさん「エトピリカ」という鳥をご存じでしょうか。チドリ目ウミスズメ科に属する潜水性の海鳥で水深約60メートルまで潜水できるうえ、空を飛ぶこともできます。北海道・道東が繁殖地の南限になっており、かなり数は減っていますが、日本でも野生のエトピリカを見ることができます。

ちなみに名前の由来はアイヌ語で「エトゥ(くちばし)ピリカ(美しい)」からきています。

海遊館の「アリューシャン列島」水槽では、平成30年6月からエトピリカ5羽の展示を始めました。5羽それぞれの個性と魅力を発信していきたいという思いを込めて、1羽ずつに北海道の地名を愛称としてつけています。

展示開始翌年に雄の「おこっぺ」と雌の「ところ」のペアに、ひなが誕生しました。海遊館で初めてのエトピリカの繁殖でしたが、順調過ぎるほどスクスク成長し、48日後に巣立ちを迎え、無事に6羽目として仲間入りを果たしました。愛称は「さるる」です。

そして今年も同じペアで「ところ」が6月14日に産卵し、7月30日にひなが誕生しました。

エトピリカのひなは全身真っ黒な綿羽に包まれています。私が一番驚いたことは、ペンギンは親鳥が一度消化した餌を吐き戻してひなに与えるのに対し、エトピリカのひなは最初から親鳥が運んできた小魚を丸ごと食べて成長していくことです。小さな体で勢いよく食べる姿を初めて見たときは感動しました。

今回、孵化(ふか)後なかなかひなが鳴かず、心配になりましたが、親鳥がキビナゴやオキアミを運び始め、鳴いて親鳥のくちばしから器用に魚をもらっている様子を確認することができ、ひと安心しました。孵化後1週間は毎日体重測定を行い、日々成長していく様子にひなのたくましさを感じました。

エトピリカの子育ては巣穴の奥で行うため、巣立ちを迎えるまでひなの姿を見ることができなかったのですが、9月26日に無事巣立ちを迎えました。今回もあらかじめ考えていた北海道の地名から「ちりっぷ」と名付けました。ぜひ7羽になったエトピリカたちに会いに来てください。(海獣担当飼育員 冨澤奈美)