大津中2自殺10年 「いじめは人を殺す〝凶器〟」 - 産経ニュース

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大津中2自殺10年 「いじめは人を殺す〝凶器〟」

いじめに関する資料を広げ、思いを語る父親=大津市内
いじめに関する資料を広げ、思いを語る父親=大津市内

大津市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が同級生からのいじめを理由に自殺してから11日で10年となる。この問題を機に平成25年、「いじめ防止対策推進法」が施行されたが、その後もいじめの件数は増え続けている。男子生徒の父親(56)は産経新聞の取材に応じ、「いじめは相手を殺してしまう、本当に恐ろしい〝凶器〟だ。その認識がもっと広まってほしい」と訴えた。(清水更沙)

男子生徒は23年10月、自宅マンションから飛び降りて死亡。市教育委員会と学校が実施したアンケートでは、男子生徒がいじめを受けていたことが判明したが、市教委は「いじめと自殺の因果関係は不明」とし、父親らは24年2月、加害男子生徒や市に損害賠償を求め提訴。その後、市の第三者委もいじめが自殺の直接要因とする報告書を公表し、市も責任を認めて両親と和解した。

いじめ自殺をめぐる損害賠償訴訟では、いじめと自殺の因果関係や、自殺の予見可能性を被害者側が立証するのは難しい。だが、1審・大津地裁は、元同級生2人が顔を殴ったり、ハチの死骸を食べさせようとしたりしたのはいじめに当たると判断。被害者が自殺に及ぶことは「一般的に予見可能」とし、いじめで自殺することは「通常起こり得ること」として元同級生側の賠償責任を認定し、2審もこれを支持した。今年1月には最高裁で判決が確定し、いじめ自殺をめぐる立証のハードルを事実上引き下げることにつながった。

父親は、「今は『息子が法律になったんだ』と思っている」と話す。ただ、同法には罰則規定はなく、「緩い」とも指摘。同法には付則で、施行後3年をめどに改正の必要性を検討すると記されているが、中立・公正な調査委員会委員の選任などを求めた改正の議論は進んでおらず、「今以上に子供の命を守れるような実効性のある法律になってもらわないと困るし、息子に申し訳ない」。いじめ根絶に向け、大人が真摯(しんし)に向き合うことを願っている。

繰り返される悲劇 専門家は「法改正を」

凄惨(せいさん)ないじめが原因となった大津市の男子生徒の自殺は、学校や市教委の対応に批判が集まり、平成25年6月の「いじめ防止対策推進法」の成立など、根絶に向けた動きにつながった。だが、悲劇は今もなお繰り返され、学校や教育委員会の対応をめぐる問題も指摘されている。専門家は「教育委員会や学校側がいじめに向き合う姿勢は、10年前と変わっていない」と批判している。

「いじめ防止対策推進法」は、子供の生命や心身などに大きな被害が生じたり、長期間不登校になったりした疑いがあるものを「重大事態」と定め、教育委員会や学校に調査組織の設置を義務付けている。

国は29年、重大事態の調査方法を示したガイドライン(指針)も策定。各自治体では態勢づくりが強化され、文部科学省によると、令和元年度で全国1744市町村のうち、1661市町村でいじめ防止基本方針を制定している。

だが、いじめの根絶には至っていない。昨年11月には、東京都町田市立小6年の女児=当時(12)=がいじめを訴える遺書を残して自殺。

今年3月には北海道旭川市で、中学2年の女子生徒=当時(14)=が死亡し、背景にはいじめがあったとされるが、いずれも学校や市教委からは十分な説明がなく、遺族が対応を批判している。

大津市の事件後、市の第三者委員会委員を務めた教育評論家の尾木直樹氏は、重大事態が起きた際に設置される第三者委員会の委員がその自治体に関係する識者であったり、調査前に教育委員会が「いじめとは認定できない」と公表したりする事例が依然存在することを問題視。「遺族の心境に寄り添うという前提や、真相を解明しようとする姿勢がみえない」と批判し、外部有識者で構成する第三者委員会の設置や運営への首長のリーダーシップを期待する。

また、「『子供は間違いを犯して成長するもの』という教育観を曲解し、加害者を擁護する事例もあるなど、いじめ防対法や文科省のガイドラインを活用できていない」とも指摘。「いじめ防対法には罰則規定はないが、守らなかった場合には(教師や関係者を)処分すると明記する必要がある」と法改正の必要性を訴えた。