深層リポート

地球温暖化でも高まるコメ冷害リスク 岩手大の下野教授が警鐘

過去84年間の平均上昇温度(日平均気温)
過去84年間の平均上昇温度(日平均気温)

1週間のニアミス

下野教授が恐れているのは低温と7月末~8月初めの花粉形成期がピンポイントで重なること。「この時期に1週間足らずでも低温に見舞われると、障害型冷害が起きます。受精障害になると、天候が回復しても取り返しがつかないからです」と説明する。

気象庁のデータで同教授が盛岡市の日平均気温を調べた結果、平成16年~令和3年の18年のうち半分以上で、偏西風の蛇行ややませ、気圧配置などで7、8月中に日平均気温が20度に届かない1週間から20日前後の低温に見舞われていた。たまたま花粉形成期と重ならず冷害は避けられたが、平成16、17、18、19、23、24、30年と令和2年の8年は、低温から花粉形成期までわずか1週間のニアミスだった。

地球温暖化が進んでいても、東北、北海道の7、8月の日平均気温は関東以西に比べ上昇はわずか。日平均温度が20度を下回る低温は平成16年以降2年に1度の割合で発生し、やませの頻度も減っていない。地球温暖化の原因である二酸化炭素の濃度を高めたコメの栽培実験で、耐冷性が弱まったという結果もある。

下野教授は「地球温暖化は寒冷地のコメ生産を向上させ、冷害問題を解決すると思われがちですが、冷害は発生し続けています。どのように安定的に冷害を回避するかは今後も大きな課題です」と強調している。

冷害】 冷害は人々を飢饉(ききん)という形で苦しめてきた。国内で最も古い記録は日本書紀にある626年という。天明2(1782)年から同8(1788)年にかけて発生した「天明の大飢饉」では餓死者が数十万から百万人にも達したとされる。冷害の発生回数を100年単位で集計すると、17世紀21回、18世紀25回、19世紀23回、20世紀24回。ここ4世紀は発生頻度に変化はなく、冷害は現代でも起き続けている。

記者の独り言】 平成5年の大冷害の記憶は今も鮮明だ。とんでもなく忙しい年だったからである。当時の勤務地は岩手県水沢市(現・奥州市)。米どころの県内陸南部が担当で、当時、自民党だった小沢一郎衆院議員(79)=立民=の地元。その小沢氏が自民党を飛び出し、7月の衆院選で政権交代、2、3カ月休みらしい休みがないまま、今度は大冷害である。しかも、水沢市はコメ不足発祥地。妻の「米がどこにも売ってない」の電話が発端だった。(石田征広)