深層リポート

地球温暖化でも高まるコメ冷害リスク 岩手大の下野教授が警鐘

岩手山が姿を見せた好天のもとで稲刈りをする農家。しかし地球温暖化の中でも、冷害とは背中合わせだ=9月、岩手県雫石町(石田征広撮影)
岩手山が姿を見せた好天のもとで稲刈りをする農家。しかし地球温暖化の中でも、冷害とは背中合わせだ=9月、岩手県雫石町(石田征広撮影)

コメの国内生産量の4割近くを占める東北、北海道が冷害に見舞われたのは18年前の平成15年が最後。地球温暖化で国内のコメづくりが直面する目下の課題は高温障害による品質低下で、冷害への危機感は薄れる一方だ。ところが、東北、北海道では「冷害のリスクがむしろ高まる可能性すらある」と警鐘を鳴らしている専門家がいる。20年以上にわたってコメの冷害について研究を続けている岩手大学農学部の下野裕之教授(48)だ。どういうことか-。

受精障害による冷害

地球温暖化でも冷害リスクが高まる可能性があるのは障害型冷害だ。7月末~8月初めの花粉形成期(穂ばらみ期)に水稲が低温に見舞われ、十分な量の花粉ができずに受精障害が生じて不稔となる冷害を指す。減収が大きく、壊滅的な被害をもたらす。

100年に1度といわれた平成5年の大冷害も同15年の冷害も障害型だった。低温になったのは、シベリアからオホーツク海に抜ける偏西風がシベリアから北極海近くまで北上してから南下してオホーツク海に抜ける蛇行が起こり、北極海近くの冷たい空気が入り込んだためだった。

花粉形成期の稲は最も低温に弱く、十分な量の花粉を形成するには20度以上の日平均気温が必要とされる。大冷害の平成5年は6月初めから8月後半まで低温が続き、日平均気温が20度に達しない日がほとんどだった。15年も6月中旬~8月初めに同様の低温が続いた。

5年の作況指数は東北が54、北海道が40と収穫量は通常の半分程度。親潮(寒流)の上を吹き渡ってくる冷たく湿ったやませ(偏東風)の常襲地帯で知られる青森、岩手両県の太平洋岸の作況指数は0~10とほとんど収穫がなかった。コメ不足でタイなどから緊急輸入する事態となり、被害額は東北で4960億円に上ったという試算もある。