【記者発】使い捨てには惜しかった菅政権 政治部・千葉倫之 - 産経ニュース

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使い捨てには惜しかった菅政権 政治部・千葉倫之

職員に見送られる中、官邸を去る菅義偉前首相(中央) =10月4日午後0時34分、首相官邸(寺河内美奈撮影)
職員に見送られる中、官邸を去る菅義偉前首相(中央) =10月4日午後0時34分、首相官邸(寺河内美奈撮影)

菅義偉(すが・よしひで)内閣は1年余りの短命政権で終わった。多くの国民の期待を受けて発足したものの、新型コロナウイルス対応への批判が命取りになった。

コロナに明け暮れた感がある菅政権だが、発足当初に直面した課題は、日本学術会議の会員任命問題をめぐる野党などの追及だった。国民生活と縁遠い問題の争点化は広がりに欠け、追及をいなして初の国会を乗り切った菅氏は自信を深めていたように見えた。携帯電話料金の値下げなど「国民のために働く」政権として成果を上げつつあることへの自負も感じられた。

ただ振り返ると、この成功体験が慢心につながった印象は否めない。昨年末のコロナ第3波では、肝いりの「Go To トラベル」事業の全面停止の判断が遅れた。専門家に迫られて小出し的に事業見直しを繰り返し、いかにも不満げに記者対応する首相の姿は、ありていに言えば感じが悪かった。この悪印象は後々まで尾を引いた。

年明け以降、感染の波が来るごとに2度目、3度目と緊急事態宣言の発令を余儀なくされ、支持率は下落の一途をたどった。一点突破的に個別施策を推し進めるのは菅氏の得意とするところで、ワクチン接種はそのスタイルがはまった。しかし、いら立つ国民と丁寧にコミュニケーションをとり、理解と共感を得る作業は苦手なままだった。

学術会議問題のように、批判を目的とした批判にはいくら説明を尽くしても理解を得ることは難しい。しかし菅氏は本来「話せばわかる」層との対話にも失敗したことが悔やまれる。納得されずとも理解してもらうことはできるし、苦しい決断への共感を得ることもできたはずだった。記者会見での舌足らずと鉄面皮に「ガースー、そうじゃないよ」とため息をつき、フラストレーションを募らせた国民は少なくなかったと思う。

菅政権の最後の日となった10月4日、東京都のコロナ感染者数は約11カ月ぶりに100人を切った。ネット上ではワクチン、オリパラ開催、デジタル庁発足、東京電力福島第1原発の処理水放出決定などの成果を振り返り、退任を惜しむ声があふれた。「総理と草履は使い捨て」とはいうものの、1年で使い捨てるには惜しい政権だったと思う。

【プロフィル】千葉倫之

平成14年入社。千葉総局、秋田支局、東北総局、東京本社整理部、社会部を経て22年11月から政治部。現在は首相官邸を担当。