【ロンドン=板東和正】ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、2021年の平和賞を、フィリピンの女性ジャーナリスト、マリア・レッサ氏と、プーチン政権への批判で知られるロシアのリベラル派新聞「ノーバヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラトフ編集長に授与すると発表した。民主主義と恒久的な平和の前提である表現の自由を守るために尽力したことが評価された。
レッサ氏は、フィリピンのドゥテルテ政権と対峙(たいじ)するニュースサイト「ラップラー」の代表を務めており、容疑者殺害もいとわない薬物捜査など政府の政策を批判してきた。反政権派への嫌がらせについても報じてきた。2018年には真実を追求する姿勢が評価され、米誌タイムの「今年の人」に選ばれた。
ムラトフ氏は1993年に「ノーバヤ・ガゼータ」を創刊。同紙はロシアで独立した新聞としてプーチン政権の批判を続け、当局の暴力や不法逮捕などさまざまな記事を掲載してきた。ムラトフ氏は2007年、国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)から国際報道の自由賞を授与された。
ノーベル賞委員会は2氏について「フィリピンとロシアにおける表現の自由のための勇気ある闘いをした」と授賞理由を説明。「民主主義と報道の自由がますます不利な状況に直面している世界において(民主主義を守る)理想のために立ち上がった全てのジャーナリストの代表だ」とたたえた。
授賞式は例年、12月10日にノルウェーの首都オスロで行われるが、今年に関してはノーベル賞委員会が受賞者の出席が可能かどうかを検討中で、10月中旬に最終判断を発表する見通し。
賞金1千万スウェーデンクローナ(約1億2700万円)が贈られる。