「いい人」のままではいられない 岸田首相が所信演説 - 産経ニュース

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「いい人」のままではいられない 岸田首相が所信演説

第205臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=8日午後、衆院本会議場(春名中撮影)
第205臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=8日午後、衆院本会議場(春名中撮影)

温厚な性格で、敵を作らない。批判する人でも最後は「いい人なんだけどね…」と付け加える。岸田文雄首相が行った所信表明演説は、そんな人物像がにじみ出る内容だった。

「前首相のご尽力に心より敬意を表します」

首相は菅義偉(すが・よしひで)内閣が進めた新型コロナウイルスのワクチン接種について「他国に類を見ない速度」と称賛した。自民党の二階俊博前幹事長の看板政策「国土強靱化」にも言及し「高速道路、新幹線など、交通、物流インフラの整備を推進する」と述べた。

菅、二階両氏は首相の政敵とも言える存在だ。菅氏は昨年の自民党総裁選で首相の前に立ちはだかり、その後は首相を無役とした。二階氏が会長を務める党二階派(志帥会)と首相の岸田派(宏池会)は、複数の選挙区で所属議員が競合するライバル関係にある。

初めての所信表明演説で2人に配慮してみせるところに首相の真骨頂があるのかもしれない。政権のキャッチフレーズである「新しい資本主義」は経済成長重視を見直して富の分配に力点を置くところが首相の特色だが、「成長」か「分配」かをめぐる論争を「不毛な議論」と断じてバランス感覚をアピールした。

そんな首相がこだわりを見せるのが核兵器廃絶に向けた取り組みだ。演説では「被爆地広島出身の首相として、私が目指すのは『核兵器のない』世界だ」と述べ、「世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名前の松明(たいまつ)」を受け継ぐと宣言した。

首相は昨年10月に出版した自著で「松明」を受け継ぐ「世界の偉大なリーダー」の一人に核廃絶を訴えたオバマ元米大統領の名前を挙げた。だが、核廃絶への執着は首相の判断を誤らせる可能性もある。

オバマ政権では核の先制不使用が一時検討された。北朝鮮や中国が通常兵器で日本を攻撃した場合、米国が核で報復する可能性をあらかじめ放棄するならば、日本に提供する「核の傘」にほころびが生じかねない。当時、日本政府は水面下で米側に再考を求めた。

オバマ政権で副大統領を務めたバイデン大統領は「核態勢見直し(NPR)」を進めている。バイデン政権が日本の国益を損なう判断を行おうとしたとき、首相は日本のトップとして「いい人」のままではいられない。(杉本康士)