政策総動員で成長も実現 首相、所信表明で分配偏重懸念に配慮 - 産経ニュース

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政策総動員で成長も実現 首相、所信表明で分配偏重懸念に配慮

第205臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=8日午後、衆院本会議場(春名中撮影)
第205臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=8日午後、衆院本会議場(春名中撮影)

岸田文雄政権が政策理念として掲げる「新しい資本主義」は、格差是正に重点を置くため、経済成長が置き去りにされ分配ばかり優先されるのではとの見方が市場関係者などから指摘されていた。8日の所信表明演説では、成長と分配をいずれも実現するために「あらゆる政策を総動員する」決意を表明し、こうした懸念の払拭に努めた形だ。

首相は新しい資本主義を実現する「車の両輪」が、成長戦略と分配戦略だと説明。成長戦略では、科学技術立国を実現するため「10兆円規模の大学ファンド」を今年度内に設置する方針を表明した。地方でのデジタルインフラ投資を進めることで「新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていく」とも述べた。

また、分配戦略では、中間層拡大と少子化対策のため教育費や住居費の支援を強化し、大学卒業後の所得に応じた「出世払い」制度を整備。看護、介護、保育など新型コロナウイルスや少子高齢化対応の最前線にいる人々の収入を増やすべく、「公的価格の在り方を抜本的に見直す」とした。

首相が分配戦略に重きを置くのは、市場原理を重視した過去の経済政策で「富める者と富まざる者との深刻な分断」が進み、格差が広がったとの反省からだ。ただ、日本経済はバブル崩壊後、約30年にわたり長期の停滞が続く。コロナ禍で困窮した弱者への目配りは重要とはいえ、経済規模が拡大せずに限られたパイを富裕層と中低所得層で奪い合う政策では、この国を覆う閉塞(へいそく)感は打破できない。

所信表明では、物価が持続的に下落する「デフレ」からの脱却を経済運営の目標に掲げ、「成し遂げる」とした。コロナ後の世界的な構造変化に直面する岸田政権は、過去の政権になし得なかった大胆な成長戦略こそ求められている。(田辺裕晶)