岸田文雄首相は8日、中国の習近平国家主席、インドのモディ首相とそれぞれ電話で会談した。首相は習氏との会談で、中国海警局の船が周辺海域で領海侵入を繰り返す尖閣諸島(沖縄県石垣市)のほか、日本政府が人権状況に懸念を表明してきた香港、新疆ウイグル自治区の問題を取り上げ、意見を交わした。台湾問題も話題に上ったという。
首相は会談後、官邸で記者団に「尖閣、香港、新疆ウイグル、こうした問題について提起した」と述べた。同席者は「首相は台湾問題もしっかり言及した」と述べており、台湾海峡の平和と安定を重視する日本の立場を伝えたとみられる。南シナ海における中国の一方的な現状変更の試みにも懸念を表明した。
両首脳は北朝鮮を含む諸課題で協力していくことで一致した。習氏の来日に関し、首相は「電話会議の中ではやりとりはなかった。何も決まっていないと承知している」と述べた。
中国の国家主席が日本の新首相に電話で祝意を伝えたのは昨年9月の菅義偉(すが・よしひで)前首相が初めてだったが、今回で日本の首相2代に連続して国家主席が前面に出る異例の対応を取った。米中対立が続く中で、日本と良好な関係を保ちたい中国側の狙いもありそうだ。
また、首相はモディ氏との会談について、記者団に「日米豪印なども活用しつつ『自由で開かれたインド太平洋』の具体化をともに進めていくことを確認した」と説明した。