【鬼筆のスポ魂】男子ゴルフに新たな波 植村徹也 - 産経ニュース

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鬼筆のスポ魂

男子ゴルフに新たな波 植村徹也

9月のパナソニックゴルフでティーショットを放ち、ボールの行方を見る中島啓太
9月のパナソニックゴルフでティーショットを放ち、ボールの行方を見る中島啓太

プロフェッショナルとアマチュアの力の差が大きい競技はなにか。一般的によく言われているのが囲碁と将棋とゴルフだ。野球やサッカーなども当然ながらプロとアマのレベルにはかなりの差はあるだろうが、スポーツの世界で見るならゴルフこそが最もレベルに差がある…と言われていた。

しかし、そうした概念を打ち破る出来事が来週の週末、琵琶湖で起きるかもしれない。10月14日から17日まで滋賀県栗東市の「琵琶湖カントリー倶楽部」(琵琶湖コース・三上コース=6986ヤード)で行われる男子ゴルフの『第86回日本オープンゴルフ選手権』で94年ぶりの快挙が達成されるかもしれない。現在、世界アマチュアランキング1位の中島啓太(日体大3年)や杉原大河(東北福祉大4年)、河本力(日体大4年)らが第1回大会(1927年)の赤星六郎以来、94年ぶり2人目のアマチュア優勝を飾る可能性があるのだ。

大会主催の日本ゴルフ協会(JGA)の山中博史専務理事は5日に行われた開催説明会で「並み居るプロの選手達を前に失礼な話かもしれないが、彼らの可能性はゼロじゃあない。上位に来る可能性はある」と話した。実際、2週前のパナソニックオープンで中島啓太は史上5人目のアマチュア優勝を果たした。前週の男子下部ツアーでは河本力が優勝し、昨年の日本オープン選手権(紫カントリークラブすみれコース=千葉県)では杉原大河と河本力が5位でローアマを分け合っている。

28年前の93年大会で、尾崎将司との激闘を制して日本オープンを勝った奥田靖己もリモートで説明会に出席。苦笑いを浮かべながら「彼らなら(優勝の可能性は)あるかもしれないね」とアマチュアの選手達の勢いを認めていた。

日本オープンゴルフ選手権は毎年、秋季に開催される日本のプロゴルフメジャー大会。今大会は賞金総額2億1千万円、優勝賞金4千2百万円で行われる日本国内で最高峰の大会だ。当然ながらコースセッティングは難易度が高く、グリーンは12~12・5フィートで速くて硬い。ラフも深く、奥田靖己は「ティーショットでいかにフェアウエーをキープするか。それとグリーン上のパターの精度が大事。優勝へのカギはその2つだと思う」と話した。

もちろん、アマ選手の前にはトッププロ達が立ちはだかるだろう。19年の日本プロゴルフ選手権で優勝し、昨年の日本オープンでは3位に入った石川遼や木下稜介、金谷拓実、昨年の覇者・稲森佑貴らが優勝を目指す。ゴルフで飯を食っている、生活をかけている者のプライドを心に秘めて挑んでくるだろう。プロやアマに問わず、メジャー大会を制するには「物凄い重圧との戦いになる。私が優勝した時もクラブを握る手の平から汗が滴り落ちた」と奥田靖己は振り返った。パワーとテクニックとともに精神力の強い者こそが最後に笑うはずだ。

女子のゴルフ界では、すでに黄金世代、プラチナ世代、新世紀世代など、若手の波が次々と押し寄せ、今やトーナメントの優勝争いの上位に20歳前後の若い女子プロ達がズラリと並ぶ。一方で男子では今年のメジャー大会のマスターズを制した松山英樹は29歳。石川遼もいつの間にか30歳を迎えた。そろそろ新しい波が男子のゴルフ界にも押し寄せてくるタイミングか…。ターニングポイントとなる舞台こそが86回目の日本オープンであっても何ら不思議ではない。

いつの世も、若い人たちが歴史に挑み、打ち破っていく姿こそが人々に勇気を与え、未来を明るく感じさせる。コロナ禍で暗く沈んだ世の中の空気を変えるアマ選手達の活躍が見られるのか。実に楽しみだ。

(特別記者)