【マーライオンの目】脱出は幸せだが… - 産経ニュース

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マーライオンの目

脱出は幸せだが…

「今後、アフガニスタンで何が起きるかは誰にも分からない。だが、輝かしい未来を想像できる人は皆無だろう」

イスラム原理主義勢力タリバンの復権を受け、アフガンから米国に逃れた産経新聞通信員のズバイル・ババカルヘイル氏は祖国についてこう話した。

失敗を繰り返した末の脱出記は本紙で発表され、詳報は発売中の雑誌正論11月号に掲載されている。記者も8月15日の首都カブール陥落以降、飛行機の手配など出国のサポートを続けていた。連絡がつかないことも多々あり心配したが、脱出成功に安堵(あんど)した。

ババカルヘイル氏は家族5人で米中西部ウィスコンシン州の米軍施設に滞在中だ。だが、アフガンの未来を考えると、脱出成功を心からは喜べないと同氏はいう。タリバン支配下では恐怖政治復活の懸念をぬぐえないほか、経済状況の悪化で国民の97%が貧困層になるという試算もある。貧困が不満を生み、今後出国を望む国民は増えていくことが予想されている。

1979年の旧ソ連侵攻以来続く混乱に終止符が打たれる見通しはない。「多くの人の尽力で脱出できたことは幸せだ。だが、祖国から脱出しないですむことがもっと幸せだ」。

ババカルヘイル氏のつぶやいた言葉が強く印象に残った。(森浩)