製紙大手、木材新素材「CNF」に活路 収益確保へ用途探る 日本製紙は化粧品

日本製紙が増強したセルロースナノファイバーの実証生産設備=静岡県富士市の富士工場
日本製紙が増強したセルロースナノファイバーの実証生産設備=静岡県富士市の富士工場

製紙各社が、軽さと丈夫さを兼ね備えた木材由来の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の用途開拓を急いでいる。日本製紙は、CNFを原料に使った化粧品を開発し、子会社を通じて市場参入する。王子ホールディングス(HD)は、ガラス窓の代替を狙う。各社とも、製紙事業で培ったノウハウや日本の豊富な木材資源を生かせるCNFを新たな経営の柱に育て、紙需要の減少による収益減を補いたい考えだ。

CNFは、木材繊維をナノ(1ナノは10億分の1)メートルレベルまで解きほぐした機能性素材だ。軽さや丈夫さ以外にも、木材由来で入手しやすく製造時の二酸化炭素(CO2)排出量が少ないなど多くの特長があり、「夢の素材」とも呼ばれる。既に化粧品や食品で保湿効果を高めたり、食感を高めたりするのに使われており、電気をためる作用もあるため蓄電池への応用研究も進みつつある。

日本製紙は、子会社の日本製紙パピリア(東京都千代田区)を通じてスキンケア化粧品の新ブランド「BIOFEAT.(バイオフィート)」を立ち上げ、CNFを原料に使った化粧水や洗顔料など4商品を15日から販売する。ファンケルが製品化や生産で協力。CNFが保水性に優れている点や環境にやさしい点をアピールし、2025(令和7)年度に5億円の売上高を目指す。

日本製紙はほかにも東北大と、レアメタル(希少金属)が不要な高性能蓄電池の開発に今年から着手。石巻工場(宮城県石巻市)にある世界最大級の量産設備などに加えて、7月に富士工場(静岡県富士市)でCNFを混ぜた強化樹脂のサンプル品を作る設備を増強した。今回の化粧品市場への参入で、紙以外の事業を育成するとともに、CNFの生産拡大を図る。

CNFの用途開拓には他の製紙大手も力を入れる。王子HDは、CNFを透明なポリカーボネート樹脂に混ぜた新素材の開発を急ぐ。ガラスに近い剛性を確保でき、軽量化も可能といい、30年までの電気自動車(EV)やドローン(無人航空機)への採用を目指す。中越パルプ工業は6月に発売されたスニーカーの靴底にCNFが採用された。ゴムに練り込むと靴底の摩耗を約4割減らせるという。

調査会社の矢野経済研究所によると、CNFの出荷金額(世界)は21年の見込みで53億7500万円。現時点では添加剤としての活用が中心でそう多くない。ただ、30年には258億円まで拡大するとみており、樹脂と混ぜて石油由来の樹脂から置き換えたり、使用量の多い自動車用部材に採用が広がったりすれば、それ以上の市場拡大が期待できそうだ。

日本製紙連合会の野沢徹会長(日本製紙社長)は「CO2削減やEV化といった社会的要請に応えるための一つの材料として、製紙業界も期待に応えていきたい」と話す。(井田通人)