酒造りの勘と経験 データ化働き方改革で技術伝承も

出来上がった酒の味を確認する梅乃宿酒造の社員=奈良県葛城市(同酒造提供)
出来上がった酒の味を確認する梅乃宿酒造の社員=奈良県葛城市(同酒造提供)

日本酒造りに欠かせない「杜氏(とうじ)」。複雑な工程を勘と経験で取り仕切る酒造りに不可欠な存在だが、近年後継者不足、高齢化などで確保が難しくなっており、技術の伝承が課題だ。創業約130年の「梅乃宿酒造」(奈良県葛城市)は、データを駆使し社員がチームで関わることでノウハウを蓄積。国連の「SDGs」(持続可能な開発目標)にある「働きがいも経済成長も」という理念のもと、新しい酒文化の創造を目指す。

データを駆使

米を洗う、蒸す、麴(こうじ)菌をふりかけ麴を造る、酒の元になる酒母(しゅぼ)を造る、発酵を管理する…。酒造りには仕込みから完成までさまざまな工程があり、杜氏の勘や経験、培った技術に頼るところが大きかった。

同社は平成29年、杜氏制度をなくすにあたり、経験や勘の数値化で乗り切りを図った。多岐にわたる工程ごとの適切な数字をデータ化。アルコール度数の管理や麴はどの程度必要か、米に水をどのぐらい吸わせるのか―。過去のデータを基に分析し、酒の仕込みを始めている。

データは毎年同じでなく、その年ごとの気候や酒米の特徴で変わり、緻密な分析が必要だ。これを7人の社員が担当に分かれて取り組んでいる。以前は酒造りが始まると杜氏がつきっきりで蔵に泊まることが多かったが、今ではほぼ泊まりはなく、一般的な会社員と同様の就業スタイルとなった。

責任者はいるものの、データを活用することで、若手も含め酒造りへの関わりが広がったという。研修や勉強会も開かれ、技術の向上が図られている。

「社員は財産。雇用を守り、働きがいを持ち続けてもらうことで、新たなアイデアも出てくる」

そう話すのは社長の吉田佳代さん(42)だ。杜氏がいたころから、働き方の変革を模索していた。その一つが、約20年前に参入し、現在は主力商品に成長した梅酒の醸造。事業のきっかけは、冬場を中心とした季節雇用の杜氏に1年を通じ働いてもらうためだった。

社員の働き方への支援はこのほかにも。就学手当などを手厚くし、子育て世代への支援を強化。働き続けられる環境づくりによって産休や育休からの復帰率は100%となった。

リサイクルの徹底

SDGsでは「つくる責任つかう責任」などの環境配慮の事業も実践する。