新「日常」の先㊦ 配膳ロボ、AIカフェで密の「宿命」回避 - 産経ニュース

メインコンテンツ

新「日常」の先㊦ 配膳ロボ、AIカフェで密の「宿命」回避

そこに店がある限り、人は集まる-。飲食業などは基本的に人を集めなければ成り立たないビジネスだ。密や接触という「宿命」を、ロボット技術や人工知能(AI)を駆使して解消しようという動きが出てきた。背景にあるのは、コロナ禍で強まった「安全・安心」志向がこの先、後退することはないという見方だ。

JR大阪駅に直結するホテルグランヴィア大阪(大阪市北区)1階のレストラン「イグナイト」。

テーブルより少し高さがある円筒形のロボットが1台、料理の盛り付けられた皿を〝頭上〟に載せ、テーブルの間を、音も立てず縫うように行き来する。ソフトバンクロボティクス(東京)が開発した配膳ロボット「Servi(サービィ)」だ。

3Dカメラや高性能センサーを搭載し、テーブル配置を前もって記憶させれば、厨房(ちゅうぼう)から指定されたテーブルまで迷わず進む。料理が冷めることはない。

皿をテーブルに移すとき店員の手が要る。しかし大勢の店員が行き交う必要はなく、お互いや来客と接触するリスクを大幅に抑えられる。5月に始まった人とロボットの〝共同接客〟。「人と人の接触を減らしつつ、温かいもてなしを実現したい」。ホテルの担当者はこう強調した。

客の好み分析

今年6月、東京・秋葉原JR線高架下にある20平方メートルほどのスペース。AIで分析した利用客の好みにあう高級豆のコーヒーをマシンが提供する〝無人カフェ〟が登場した。開発したのはITベンチャー、ニューイノベーションズ(東京)。

別の場所にいる利用者がスマートフォンのアプリに好みを入力すると、AIが分析して数種類のコーヒーをアプリ上で提案する。選んで注文し、指定した時間にマシンのところへ行けば、待ち時間なく淹れ立てを受け取れる。料金の支払いはアプリに登録したクレジットカードで行う。

マシンの周りに従業員はいない。「コロナ禍で店員と接触せずコーヒーが楽しめる点に注目が集まり、問い合わせが急増している」。中尾渓人(けいと)最高経営責任者(22)はこう話す。無人カフェはいま秋葉原、新橋など3カ所にあり、年内に15カ所ほどまで増やす予定だ。

次々と非接触の技術やサービスを打ち出す飲食業界。大阪外食産業協会の高橋淳会長(ワン・ダイニング社長)(60)は「コロナ禍で、消費者にとり安全・安心が絶対条件になった」と断じる。ソフトバンクロボティクスの畑達彦プロジェクト推進本部統括部長(45)は「仮にコロナが撲滅されても安全・安心への意識は決してコロナ前と同じにはならないだろう」と予想した。

「期待」持てず

「非接触」の取り組みは飲食業以外でも進む。

会場と出席者の自宅をオンラインでつないだ「リモート婚」。コロナ禍で打撃を受けた婚礼業界では、新しい形の挙式が広がっている。「感染対策を取って挙式や披露宴をしたいと考える新郎新婦が今も多数派だ」。結婚情報誌「ゼクシィ」を発行するリクルートの担当者はこう指摘する。

故人を悼む企業の「お別れの会」も、会場となるホテルが密を避けるため大宴会場を提供したり、参列者の動きを一方通行にして接触を防いだりといった工夫をするようになった。

「コロナの変異株が次から次へと現れ、人々は『ワクチンを接種すればコロナ問題が一気に解決する』という期待を持てなくなった」。こうみるりそな総合研究所の荒木秀之主席研究員(46)は、人々がコロナとの共存へ暮らしのかじを切る覚悟を固めつつあると考える。国内初の緊急事態宣言から約1年半、コロナ禍での新常態はさらなる段階に入ったとも言える。

この連載は岡本祐大、加藤園子、黒川信雄、田村慶子、山本考志が担当しました。