自動車減産、出口見えず 経済損失1・4兆円超に

世界的な半導体不足と東南アジアの新型コロナウイルス感染再拡大の影響の二重苦で、日系自動車メーカーの減産の動きが10月に入っても続いている。販売にもマイナス影響が出始めており、各社の業績が悪化しかねない。自動車産業は裾野が広く、減産による国内の経済損失は1・4兆円超に上るとの見方もあり、ワクチン接種の拡大をてこに政府が目指す経済正常化の足かせになる恐れもある。

トヨタ自動車は東南アジアからの部品調達が滞っていることなどを理由に、10月の世界生産は33万台(計画の約4割相当)減らす。令和4年3月期の生産台数の計画は当初の930万台から900万台に下方修正。ホンダも10月上旬に国内工場で計画比で3割減産する。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、各社の減産による名目国内総生産(GDP)でみた経済損失は1兆4400億円程度に膨らむと試算。「調達先の部品メーカーの雇用などにも影響する」と語る。

米コンサルティング会社のアリックス・パートナーズは9月24日、半導体不足で2021(令和3)年の世界の自動車産業は770万台の生産が失われ、2100億ドル(約23兆円)相当の損失が出るとの試算を発表。5月時点ではマイナス影響を390万台、1100億ドルとし生産の回復を想定していたが、東南アジアのコロナ禍を踏まえて影響の拡大を見込む。

日系自動車メーカーの令和4年3月期の減産影響の規模は当初計画比で計100万台超となる見通し。各社は下半期に挽回したい考えだが、工場停止などの動きは10月も続く。

マツダは本社工場(広島市)と防府工場(山口県防府市)で、月内の夜勤を計10日間それぞれ停止する。スズキも四輪車と二輪車の国内完成工場を月内に1~3日間稼働停止にする。

コロナ禍で、公共交通機関に比べて感染リスクの低い安全な移動手段としてクルマは見直され、新車の需要は高いが、減産は納車の遅れにもつながる。ホンダが4月に発売した新型のスポーツ用多目的車(SUV)「ヴェゼル」の一部は納車に1年以上かかる場合もあるという。

9月の国内新車販売台数は前年同月比32・2%減の31万8371台と、3カ月連続のマイナス。3年度上半期(4~9月)の国内新車販売台数は前年同期比1・1%増の205万359台にとどまった。6月ごろから各社の減産に拍車が掛かったことが響いており、下半期に挽回できなければ通期の販売台数は前年割れとなる可能性もある。

トヨタなどは直接取引をしていない調達先の状況も把握して半導体不足などに備えるが、「先行きが見通せない」(大手首脳)と困惑の声は消えない。

(宇野貴文)