朝晴れエッセー

さようなら フラガール・10月6日

68歳で仕事を辞めてから、何か楽しいことをしたいとフラダンスの教室に入った。

リズム感はにぶい、振り付けはなかなか覚えられない、ハワイ語はむずかしい。四苦八苦しながらでもお稽古は楽しかった。

一番近い年齢の人でも10歳下、娘と同年代や孫と同じくらいの人まで、そんな仲間に支えられて20年が過ぎた。

華やかなおそろいのドレスがうれしくて、つい笑みがこぼれる。フラは笑顔が一番という。

技術はともなわないけど笑顔は満点だった。

年1回の梅田スカイビル、京都駅の特設舞台をはじめ、百貨店の催し、公民館まつり、老人施設の慰問など数えきれないステージを楽しんだ。

由緒ある中之島の大阪市中央公会堂の舞台にも立てた。白浜の海辺で夕日を背にして踊ったことも。

『まつりインハワイ』という催しで参加したワイキキの浜辺のステージで、80歳のフラガールと紹介されて、たくさんの人たちから祝福を受けた。

ここ2、3年、足にも腰にもいろいろ不具合が出てきた。先生や仲間たちに引きとめられてきたが、もう体がいうことをきかない。

みんなと同じことができないのはつらい。幕を引くときだと決心した。

山のようなドレス、パウスカート、花やレイの前で茫然(ぼうぜん)としている。

胸の中を風が吹きぬける。

ハワイの風が。

塩谷一子 88 大阪府摂津市