英国、「コロナ共生」一進一退 入院増で医療逼迫も

7月19日、再開されたロンドンのクラブで酒を飲んで楽しむ人々(AP)
7月19日、再開されたロンドンのクラブで酒を飲んで楽しむ人々(AP)

【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルス対策の行動規制を7月にほぼ撤廃した英南部イングランドでコロナの入院患者が増加してきた。「ウイルスとの共生」を掲げる英政府は重症化しやすい高齢者らにワクチンの3回目接種を行うなどしてロックダウン(都市封鎖)の再開を避けたい考えだが、医療体制の逼迫(ひっぱく)を抑えられるかは不透明だ。

ジョンソン英政権は7月19日、イングランドで店舗でのマスク着用義務や他人との距離を確保するルールなどを撤廃。ナイトクラブの営業を解禁し、在宅勤務の奨励も終えた。それから2カ月余りが経過。感染症の専門家は感染の現状について「一進一退を続けている」と分析する。

1日当たりの新規感染者数は規制撤廃時の約3万9000人から8月上旬に約2万1000人に減ったが、全人口の大半を占めるイングランドで学校が再開した9月に入って以降は3万人を超える日が増加。未接種の若者のほか、接種を完了した高齢者が感染力が強い変異株「デルタ株」に感染する例が相次いだためだ。特に65歳以上の重症化が深刻になっている。

政府によると、全国の累計入院者数は10月1日時点で約54万9000人で、規制撤廃時から6万人以上増加。政府の非常時科学諮問委員会(SAGE)は1日当たりの新規入院患者数が、1日時点の約640人から月内に7千人に達する可能性があると予測。1日あたり数十人程度の死者数も「必然的に増す」(SAGEのエドモンズ委員)と警戒されている。

こうした中、政府は9月中旬、冬に向けた新型コロナ対策を発表。医療が逼迫した場合、マスク着用の再義務化やワクチンパスポート導入などの緊急対応策をとると明らかにした。「さらに高い免疫の壁をつくる」(ジョンソン首相)として、50歳以上などの人を対象にワクチンの3回目接種も同月下旬に開始した。

ただ、政府は「ウイルスと共生する社会」を目標に掲げ、規制より個人が自己責任で感染防止に努める方針を継続させたい考え。緊急対応策はロックダウンを避けるための最終手段で、「今後の医療現場の様子をみて慎重に導入する」(英与党・保守党議員)との見方も出ている。

一方、英メディアによると、医療関係者はすでに医療が深刻な状況にあるとし、緊急対応策の早期実施を要求。英国医師会のナグポール会長は「今冬に医療サービスを維持するには、感染を抑止するさらなる対策が不可欠だ」と訴えた。

医療現場の現状への懸念は国民にも強い。英調査会社「レッドフィールド・アンド・ウィルトン・ストラテジーズ」が9月に発表した世論調査では、成人1500人の61%がロックダウンを含む規制強化を支持した。