京都・大原の再生 未来を耕せ 有機農業に挑戦

比叡山麓に広がる畑で、植え付けたニンジンの苗の状態を確認する音吹畑の高田さん=京都市左京区
比叡山麓に広がる畑で、植え付けたニンジンの苗の状態を確認する音吹畑の高田さん=京都市左京区

京都市中心部から北に車で30分ほどの左京区大原地区。比叡山西麓に位置し、三千院や寂光院といった寺院が点在する観光地だ。のどかな田園風景が広がるが、約20年前には少子高齢化の影響で農業離れが起こり、こうした風景は存続の危機に陥った。「持続可能な開発目標(SDGs)」が目指す豊かな土壌の回復。大原の農地と農業を守り未来へ継続させようと立ち上がったのは、大原に移住して有機農業に取り組み始めた若者たちだった。

地域と共に

「食卓と現場(農村)の距離感や断絶をなくしたい。顔の見える農業がしたいんです」。こう話すのは、平成20年に大原に移住し、有機農業を始めた高田潤一朗さん(40)だ。

畑を訪れた日、ダイコンやニンジン、カブなど秋冬野菜の種まきや苗の植え付け作業に従事していた。京都市伏見区で農業と無縁で育った高田さんは、現在大原に計約1・4ヘクタールの畑を借り、年間50~100種類の野菜を栽培する多品目農家を営む。スタッフは7人。風のそよぎや水のせせらぎなど「音」を感じたいという思いから屋号を「音吹畑(おとふくばたけ)」と名付けた。

環境に配慮し、農薬や化学肥料を使わない有機農業を実践する。出荷先は主に、農産物直売所「里の駅大原」や同所で毎日曜早朝に行われる「大原ふれあい朝市」、直接仕入れに訪れる小さな八百屋など。

大きさや形などが厳密に定められている市場では規格外品は廃棄されることが多いが、「大原には対面で販売できる場があって『割れているけどたくさん入ってこの値段です』と提案できる」。余った野菜で切り干しダイコンや切り干しニンジンを作るなど、余すところなく利用する。

化学物質過敏症の人やアルコール依存症から復帰を目指す人もスタッフに受け入れる雇用面の多様性も。「農業は一般社会では働きづらい人の受け皿になる」が持論だ。

ただ、不安材料もある。現在借りる農地の一部について、所有者が売却を決定。「地域に溶け込みながら農地を守っていこうとやってきたが、価値観が異なる人たちが入ってきて農村の形が変わってしまうのでは」と憂慮している。

景観も守る

農家レストラン「わっぱ堂」を経営する細江聡さん(46)も岐阜県出身で、高田さんとほぼ同時期に大原に移り住んだ一人。