【ビブリオエッセー】ジョージとレニー、友情の行方 「ハツカネズミと人間」スタインベック著 大浦暁生訳(新潮文庫) - 産経ニュース

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ビブリオエッセー

ジョージとレニー、友情の行方 「ハツカネズミと人間」スタインベック著 大浦暁生訳(新潮文庫)

結末は予想をはるかに超え、衝撃的なものだった。聡明な小男ジョージと少し頭の弱い大男レニー、二人の友情は周囲の人間たちには特異なものとしてしか映らない。旅から旅へ、農場で働く貧しい季節労働者たちの人間模様は悲哀が漂い、味わい深い。

舞台はアメリカのカリフォルニア州。物語は、それまでいた農場から追われた二人が新しい農場へ向かう場面から始まる。レニーは何かと面倒を起こすが、その都度、ジョージが助け舟を出し、事を収めてきた。

自分がジョージの足手まといだと感じているレニーが「おら、どこかさ行っちまったって、いいんだよ、ジョージ。ほら穴に住んだって、いいんだからな」。ジョージはすかさず「地獄へ行っちまったっていいよ。さあ、もう黙れ」。一緒にいてほしいんだとほのめかした。

舞台のような二人の会話はユーモアを超えて心温まるものがあり、ホロリとさせる。二人には夢がある。「一軒の小さな家と農場を持ち、土地のくれるいちばんいいものを食い、ウサギを飼って静かに暮らす」ことだ。

しかし二人の夢はレニーの不始末でまた遠のいてしまう。レニーの不出来に悪意はないが、その無知による純粋さが不憫だ。そしてジョージの手で決着をつけなければならない事態が訪れる。レニーへの友情を胸に秘めてとったその決断が、あまりに切ない。

ちっぽけなハツカネズミがレニーならば喜怒哀楽を体現できる人間がジョージと言えなくもない。広大な宇宙の片隅に生きる人間と動物。いや、人間同士が互いの存在を認め合い、どう折り合いをつければよいか。ノーベル文学賞作家の中編は深い余韻とともに生きることの深奥をのぞかせてくれる。

大阪府岸和田市 竹内健一(75)

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