岡本圭人、父・健一と描く親子の苦悩と愛

「Le Fils 息子」でニコラを演じる岡本圭人(右)と父・ピエール役の岡本健一。実の親子が父と息子の苦悩と愛を描く
「Le Fils 息子」でニコラを演じる岡本圭人(右)と父・ピエール役の岡本健一。実の親子が父と息子の苦悩と愛を描く

思春期のむずかしい時期を生きる息子と親の苦悩、愛情を描いた「Le Fils(ル・フィス)息子」(フロリアン・ゼレール作、齋藤敦子訳)が14日から、兵庫県西宮市の県立芸術文化センターで上演される。父子を演じるのは、実の親子の岡本健一(52)と圭人(28)。圭人は今春、ジャニーズの人気アイドルグループ「Hey! Say! JUMP」を脱退し、俳優として再スタートを切った。「思春期に感じた不安や重圧を思い出しながら、リアルに演じたい」と真摯(しんし)なまなざしで舞台を見つめる。

「息子」は仏劇作家、フロリアン・ゼレールが「La Mère(ラ・メール)母」「Le Père(ル・ペール)父」に続いて手がけた、家族3部作を締めくくる作品。世界13カ国で上演され、映画化も発表されている注目作だ。

17歳の高校生、ニコラは両親の離婚にショックを受け不登校になる。ニコラの母、アンヌ(若村麻由美)から相談された父、ピエールは再婚し子供も生まれていたが、「生活環境を変えたい」と訴えるニコラを現在の家庭に迎え入れる。だが、ニコラはそこにも居場所がないように感じて…。

「ニコラは『分からない』というせりふが多い」と圭人は言う。「なぜ学校に行かないのか、何が苦しいのか。僕はその『分からない』を分かった上で演じたいと思っていました」

一方、演出のラディスラス・ショラーは首を横に振った。「ニコラは本当に分からないんだから、圭人も分かっちゃだめだ」。ピエールは息子を立ち直らせようと、自分の人生経験と照らし合わせながら叱り懸命に励ますが、ニコラは一層追いつめられ、生きる気力を失っていく。

「自分の気持ちが親に伝わらず、いらだった時期が僕にもある。ニコラが当時の思いを代弁してくれたと感じる場面もあります」(圭人)

ニコラのように父と真正面から対立したことはない。俳優として舞台で情熱的に役を生きる父は、ずっと憧れであった。自身も芸能界で人気アイドルとなったが、デビュー10年が過ぎたころから自問を繰り返すようになった。

「父は10代から(演出家)蜷川幸雄さんの舞台に出ていたのに、僕は25歳になっていた。やっぱりどうしても舞台に立ちたい。でも、気持ちだけでは立てないことにも気付きました」

演劇を基礎から学ぶためアイドル活動を休止し、平成30年から米名門演劇学校に2年間留学。悩んだ末にグループを脱退し、俳優として生きると決めた。

背中を追い続けた父と初めて同じ舞台に立つ。だが感慨よりも作品への感動と共感が胸を震わせる。

「舞台上で血縁を意識することはありません。ただ、東京公演をごらんになった方が『お芝居なのかリアルなのか分からなかった』と言ってくださった。実の親子が演じることで舞台がよりリアルに見えたのだと思います」と語る。

「このお芝居で1人でもニコラのように生きている人や家族を助けたい。子供や親と向き合うきっかけになれたら。そう思って今、ニコラを生きています」

10月17日まで。問い合わせは兵庫県立芸術文化センター(0798・68・0255)。