衆院選「自公と1対1に」 立民、共産と一本化急ぐ

立憲民主党の常任幹事会であいさつする枝野代表。左は福山幹事長=5日午後、国会
立憲民主党の常任幹事会であいさつする枝野代表。左は福山幹事長=5日午後、国会

衆院選の日程が19日公示-31日投開票に決まり、野党は決戦準備を加速させている。自民党政治からの転換を掲げる野党第一党の立憲民主党は選挙区で与党との一騎打ちの構図を作るため、共産党と候補者が競合している10~20選挙区で一本化を急ぎたい考えだ。

自民幹事長を追及

立民の枝野幸男代表は5日の党会合で「自公政権と1対1で戦う構造をしっかりと作り上げる」と述べた。4日に発足した岸田文雄政権については安倍晋三、菅義偉両政権の路線継承と位置づけ、同日の党会合で「隠蔽(いんぺい)、改竄(かいざん)、説明しない政治を、まっとうな政治に変えることはできない」と主張した。

岸田氏は自民幹事長に、平成28年に金銭授受疑惑で閣僚を辞任した甘利明氏を起用した。立民は「変わらない自民政治を象徴している」(党幹部)と標的とし、5日にさっそく野党合同「疑惑追及チーム」を開いて関係省庁などからヒアリングを実施した。

立民は全国289選挙区のうち216選挙区で候補者を擁立し、このうち約70選挙区で共産と競合している。情勢調査の結果も踏まえて勝てる可能性がある選挙区に限り、立民に一本化する方針だ。立民幹部によれば、その対象は10~20選挙区で、50程度では競合を容認する見通しという。

一本化協議は、これまで具体化しなかった。枝野氏が「共産との連立政権は考えていない」と語るばかりで、協力の枠組みを明示しなかったことが背景にある。

だが、先月30日の党首会談で、共産が共通政策を推進するために「限定的な閣外からの協力」をすると関係を整理し、合意した。共産の志位和夫委員長は「提唱してきた野党連合政権の一つの形態」と評価し、協議を加速させる構えだ。

前回の平成29年衆院選で野党が完敗した要因の一つが、当選者1人の選挙区に野党候補が乱立したことによる共倒れだった。全289選挙区での野党・無所属の得票率51%に対し、獲得議席は22%だった。

教訓を踏まえ共産は当初から立民との競合回避へ配慮していた。立民の現職が出馬し、与党との接戦が見込まれる106選挙区では9割弱で共産はそもそも擁立していない。

野党第一党狙う維新

日本維新の会は「自公政権に代わる選択肢」を志向し、最低所得保障の導入を明記した「日本大改革プラン」を掲げ、衆院選で「野党第一党」を目指す考えだ。松井一郎代表(大阪市長)が掲げた公認候補100人擁立の目標は当初、党内でも高いハードルとみなされたが、最終的には「90人近い候補者を擁立できる状況」(馬場伸幸幹事長)となった。

課題は全国政党への脱皮だ。発祥地で、党本部を置く大阪を中心とした近畿以外での党勢拡大がカギとなる。松井氏は3日に福岡県で街頭演説し、「自民党はもたれ合いで既得権益や団体にメスを入れられない」などと訴えた。

とりわけ重視するのは議席ゼロの首都・東京だ。25選挙区中、現時点で16選挙区に候補者擁立を予定し、比例票の掘り起こしも狙う。

国民は新党連携模索も

国民民主党は衆院選で23人の擁立を予定するが、最優先となる現職勝利のネックとなっているのが他党との選挙区の競合だ。立憲民主党とは覚書を交わし、選挙区で現職や公認内定者がいる場合は原則、互いに候補を擁立しないことなどで合意したが、共産党が候補を擁立しているためだ。

国民の現職、浅野哲氏の茨城5区には、共産が7月に候補者擁立を発表した。共産党を全体主義とした国民の玉木雄一郎代表の発言への反発が要因の一つとみられたが、発言撤回後も取り下げておらず、自民を利する構図となっている。

東京都議会第2党の都民ファーストの会が「保守中道」を掲げて設立した国政新党と連携を模索する動きもある。新党は東京の選挙区中心の擁立になるとみられるが、具体像は見えず、玉木氏も4日の記者会見で「引き続き見定めていきたい」と述べるにとどめた。(田中一世、原川貴郎)

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