「散歩好き」「社会全般に関心」 交流の名古屋大研究者らも喜び

ノーベル物理学賞の受賞が決まった真鍋淑郎(しゅくろう)さん(90)が特別招へい教授を務めていた名古屋大(名古屋市)では5日、吉報を受けた大学研究者らが喜びをかみしめた。真鍋さんと同じ気象分野を研究している同大大学院環境学研究科の須藤健悟教授(45)は「気象分野での受賞は非常にめずらしく、社会的にもインパクトがある」と驚いた表情をみせ、「研究の励みになる」と満面の笑みを浮かべた。

真鍋さんは平成18年から約7年間、同大の招へい教員(環境学)とCOE特別招へい教授を歴任した。米国での研究のかたわら、年に数回は同大を訪問し、学生研究員らも交えたセミナーなどに参加。須藤さんと気象の数値モデルについて議論を交わすこともあったという。

「研究を心から『エンジョイ』しておられた」。須藤さんは、自身の研究をいつも笑顔で語っていたという真鍋さんを振り返り、目を細めた。一方で、アメリカの学会で昼食をともにした際は、真鍋さんに考えをきっぱりと否定されたこともあったといい、「穏やかながらも信念を持ち芯は強い」との印象を語った。

二酸化炭素(CO2)の上昇が地球温暖化に影響するという予測を発表した真鍋さんの功績については、1960年代はCO2問題は課題とされていなかったとした上で、「昨今は社会的問題から研究が始まることも多いが、真鍋さんは純粋な興味から研究を突き進めてこられた」と評した。

散歩好きの一面もあったという真鍋さん。1日に3回もキャンパス内で出会うこともあり、須藤さんは「ずっと歩いているのかと首をかしげるほど」。「どこに行くんですか?」とたずねると、真鍋さんが笑みを浮かべ「東山動植物園」と答えたこともあったという。

須藤さんは今回の受賞が、若者が気象分野に興味を持つきっかけになればと願い、「社会の期待は大きいという重責をもって、今後も常に観測とモデル開発の両輪を進めていかないといけない」と意気込んだ。

一方、真鍋さんと親交のある神沢博・名古屋大名誉教授(68)は「気候モデルはあらゆる賞を受賞してきたが、正直、ノーベル物理学賞の対象にはなりづらいと思っていた」と驚きつつ受賞を喜んだ。

真鍋さんが名古屋大を訪れた際、神沢さんが名古屋大側の窓口を務めており、研究科の広報誌の企画で対談も行ったという。

「明るくおしゃべりで、気象だけでなく、社会全般に関心を持っていた」という真鍋さん。知的好奇心が強かったからこそ、「地球温暖化が社会問題化する前に、二酸化炭素と気温の関係についても調べてみたのだろう」と神沢さんは話す。

対談では、世界中から研究者が集まる米国の研究環境を引き合いに「ぬるま湯につかっていては、偏った見方に陥るのではないか」と日本の研究者への警鐘を鳴らしたことも印象に残っている。神沢さんは「日本の研究者にも影響を与えた偉大な先生だ」と強調した。