北川信行の蹴球ノート

「ワクチン・検査パッケージ」+α Jリーグで進むコロナ共存の世界

ヴィッセル神戸のワクチン接種者無料招待ブースに並ぶ若者ら=10月2日、ノエビアスタジアム神戸
ヴィッセル神戸のワクチン接種者無料招待ブースに並ぶ若者ら=10月2日、ノエビアスタジアム神戸

新型コロナウイルス感染による行動制限が緩和される中、ワクチンを2回接種したか、検査陰性のいずれかを示す証明書があれば制限緩和の対象とする「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験が、スポーツ界で本格的に始まる。サッカーのJリーグでは、ワクチンを接種した若者の無料招待や、ゴール裏席での「立ち上がっての観戦」の試験運用など、独自の取り組みを行うクラブもあり、コロナ共存の世界に向けた動きが加速している。

パッケージで目指す入場者数増

「ワクチン・検査パッケージ」は、ワクチン接種と新型コロナ感染を調べるPCR検査などを組み合わせることで、来場者の感染拡大のリスクを減らし、経済活動の本格再開を進める仕組み。Jリーグでは、6日に豊田スタジアムで開かれるYBCルヴァン・カップ準決勝第1戦、名古屋グランパス-FC東京が実証実験の第1号となる。

この試合では、通常の観客向けとは別に、パッケージを使用したチケットを約1800席分販売。専用席を設ける一方で、ゾーニング規制は行わず、入場ゲートやコンコースなどは、パッケージを使用しない観客と同じ動線となっている。その上で、スタジアムでパッケージを運用するための実地調査を実施。具体的には、名古屋とJリーグ、産業技術総合研究所(産総研)が連携し、専用席での観客の行動変容の分析や、パッケージ引き換えブース付近の混雑状況の計測などを行うという。

4日に日本野球機構(NPB)と共同開催した40回目の「新型コロナウイルス対策連絡会議」後の記者会見で、村井満チェアマンは「パッケージの有効性は医学界の観点からみるべきもの。われわれは安全と思われる観客をどのように誘導するか、どうしたらスムーズに試合を運営できるかを検証する」と説明した。

また、日本サッカー協会も12日に埼玉スタジアムで行われるサッカー・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の日本―オーストラリアで、同様の条件で約5千枚の入場券を追加販売した。Jリーグは30日に同スタジアムで開催されるYBCルヴァン・カップ決勝では、入場制限に沿った1万人とは別に、パッケージ対象者向けの入場券を1万席用意する方針で、段階的に入場者数を増やしていくことに意欲を示している。

無料招待、立ち上がって観戦

パッケージ導入は、コロナ禍で深刻なダメージを受けた各クラブの入場料収入の減少を回復させる施策だが、別の観点での取り組みを行うクラブもある。

J1のヴィッセル神戸は2日にホームのノエビアスタジアム神戸で行われたJ1リーグの浦和レッズ戦に、ワクチンを2回接種した16~39歳の若者約400人を無料招待した。親会社である楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が兵庫県知事、神戸市長と会談して実施が決定。接種が遅れているとされる若者世代のワクチン接種を推進するのが狙いで、今後も同様の招待を続けていくという。

楽天グループは神戸の本拠地のノエビアスタジアム神戸で神戸市の大規模ワクチン接種会場を運営。兵庫県内在住・在学の18歳以上の学生を対象に、ワクチンを2回接種すれば2千円相当のポイントを付与する事業も担う。

一方、J1のセレッソ大阪は10日のYBCルヴァン・カップ準決勝第2戦の浦和戦で、「ホームサポーター指定席」(ホーム側ゴール裏席)での「立ち上がっての観戦」の試験運用を実施する。クラブの公式サイトなどによると、来季にコロナ禍以前の応援スタイルへの回帰によるスタジアムの一体感の醸成を目指す中での、1回限りのトライアルだという。

試験運用では、立ち上がって観戦することを認める一方で、声を出しての応援禁止など、観戦ルール、マナーの順守、徹底を求めている。

プロ野球でも11月20日開幕の日本シリーズでパッケージの実証実験を行う方針。今後も、さまざまなスポーツで、コロナの感染リスクを減らしつつ、以前のにぎわいを取り戻す試みが出てきそうだ。