医療崩壊を防ぐために 新潟県佐渡市の〝コロナ医療〟舞台裏

佐渡総合病院の佐藤賢治病院長(本田賢一撮影)
佐渡総合病院の佐藤賢治病院長(本田賢一撮影)

「当院では、現在の感染状況から先々の状況を推測しながら、もっと病床を空けたほうがいいのか、あるいは空けなくてもいいのかを判断している。とにかく医療維持のため先手を打ちたい。後手に回ると、職員が疲弊して事故が起きやすくなるし、院内クラスター(感染者集団)も起きやすくなる」と佐藤病院長。

先々の感染状況を見通すために重要になるのが、保健所が持つ感染者の情報だ。例えば、発熱などの症状が出た島民が近くの診療所で検査を受けて陽性となり、保健所が自宅待機させたケースがあったとする。そうした情報が保健所から病院に速やかに寄せられると、自宅待機中の患者の症状が悪化して入院してくる可能性も考慮して受け入れ態勢をシミュレーションでき、対応が後手に回るリスクを減らすことができる。

ECMOなし覚悟

重症患者が出た場合の対応は佐渡総合病院にとって切実な問題だ。

実は、同病院は感染拡大の第4波に見舞われた今春以降、島内で重症患者が出た場合の対応について新潟大医歯学総合病院(新大病院、新潟市中央区)と話し合いを行っている。その席上、人工心肺装置「ECMO(エクモ)」による治療が有効な重症患者が島内で出た場合、新大病院に患者を搬送せざるを得ないことを伝えた。あくまで新大病院に受け入れる余力がある場合の話だ。

ECMOを使うには、医療機器を扱う国家資格「臨床工学技士」などさまざまな資格を持ったスタッフが5~6人必要だ。県内で動かせるのは、新大病院と新潟市民病院(同区)、県立中央病院(上越市)の3カ所とされる。

「8月上旬には新潟市内の重症患者対応がほぼ満杯になったときがあった。さすがにこのときは、島内で重症患者が出ても、うちの病院で対応せざるを得ないと病院スタッフに伝えた。その場合でも使える機器は人工呼吸器しかなかった」(佐藤氏)

佐渡総合病院の入院患者をみると、肺炎や骨折などで突然病院に来て、即入院となる人が入院全体の7割を占める。コロナに対応しつつ、こうした通常医療も維持し、島民の命、健康を守らなくてはいけない。佐渡市長の要望の背景にはそうした切実な事情がある。(本田賢一)