環境に家事に優しい無洗米 とぎ汁から汚染防ぐ

「あるとき、帰宅すると、ズボンにチューインガムがついていた。ガムは、その上にガムを付けて一緒にはがす。そんな知恵を思い出し、応用しました」

精米を円筒状の機械に入れた後、中心部にある小突起の付いた軸を回転させて米粒をひくと、肌ぬかが無洗米機の金属壁に付着、そこに他の肌ぬかも次々と重なっていく仕組みを開発した。さらに中心部にある大突起がぬかをはがし取り、無洗米と肌ぬかに分離する。

この機械で作り出した無洗米を平成4年、主力商品として発売した。

「米は洗って食べるものだ」「水洗いしない米はぬか臭で味が落ちるのでは」

ところが消費者の長年の固定観念や偏見もあり、当初の反響は思わしくなかった。雑賀社長も「数年は、なかなか普及が進まなかった」と振り返る。

それでも、米農家や精米機メーカーの関係者を本社に招き、地道に試食会を重ねた。次第に「水洗い不要で家事の軽減につながる」「米本来の味わいも損なわない」と評価が高まった。希望する精米業者には無洗米機も貸与した。

世界へ輸出

無洗米の生産量は、発売当初の4年度の573トンから、令和2年度には42万トンまで増えている。同社の試算によると、この約30年間の取り組みで、環境に悪影響を与えるとされるリンや窒素を約8千トン以上、油を約2万トン以上、ヘドロ沈殿物を約80万トン以上、それぞれ削減する効果を挙げた。

その取り組みは高く評価され、平成30年、環境省に「エコ・ファースト企業」と認定された。

2015年9月、SDGsが国連で正式に採択されると、無洗米は海外からも注目された。

雑賀社長は2019年11月、スイスの国連欧州本部で開かれたフォーラムに招待され、事業内容を発表した。「スローガンだけで終わらず、環境改善を社員の協力も得ながら地道に実践してきた」とスピーチすると、出席者から拍手が起こり、握手も求められた。

スイスの国連欧州本部で事業内容を発表する雑賀慶二社長=2019年、スイス(東洋ライス提供)
スイスの国連欧州本部で事業内容を発表する雑賀慶二社長=2019年、スイス(東洋ライス提供)

近年の「日本食ブーム」にも乗り、無洗米は現在、アメリカやイギリス、フランス、シンガポール、香港など世界各国に輸出されている。海外まで広がる共感の輪に、雑賀社長は「SDGsの目指す持続可能な社会の実現には『米の選択』も大事、とアピールしていきたい」と意欲をみせる。

糠(ぬか)で循環型農業実現

東洋ライスでは、無洗米発売とほぼ同時期から、無洗米の加工時に取り除いた肌ぬかを有機肥料・飼料として再利用する活動にも取り組んでいる。

肌ぬかは、川や海に投棄すれば水質汚染の一因となるが、一方で、リンや窒素がバランスよく含まれ、マグネシウムも豊富なため、農作物の食味を良くする効果があるとされる。

そこで同社は、肌ぬかに水を少量加えて粒状にし、加熱処理や滅菌処理をして有機肥料・飼料にした。一般販売はせず、「米(こめ)の精(せい)」という商品名で主に取引先農家などに有償提供している。

「肥料として田畑に戻せば、農作物が元気に育ち、循環型農業に寄与できる」と担当者。牛などの飼料にもなり、畜産業への貢献もできる。

持続可能な農業を目指す全国各地の自治体も注目。昨年7月には山梨県北杜(ほくと)市が同社と包括連携協定を提携した。(西家尚彦)