ルワンダの子供が「写ルンです」でのぞく未来 - 産経ニュース

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ルワンダの子供が「写ルンです」でのぞく未来

会場に飾られていた、ルワンダの子供が「写ルンです」で撮った1枚。生き生きとした表情が印象的だ=9月23日、高松市
会場に飾られていた、ルワンダの子供が「写ルンです」で撮った1枚。生き生きとした表情が印象的だ=9月23日、高松市

レンズ付きフィルム「写ルンです」を使って、アフリカ・ルワンダの子供たちの支援活動をするという異色の取り組みを行う写真家がいる。高松市出身の香川智彦(としひこ)さん(39)。子供たちに渡して撮り終えた「写ルンです」を千円で買い取り、その写真をもとに自身やファッションデザイナーのコシノヒロコさんらアーティストが独自の創作を手がける。完成した作品は展示販売し、利益の半分を資金に写真家育成学校を現地に開き、ルワンダの子供の中からプロの写真家を育てるプロジェクトだ。

ルワンダの生地で仕立てた着物で展示販売会に登場した香川智彦さん
ルワンダの生地で仕立てた着物で展示販売会に登場した香川智彦さん
コシノヒロコさんら賛同

今年2月に立ち上げたプロジェクトの名前は「写(しゃ)ルン族」。8月、活動資金で買った「写ルンです」100個を持参してルワンダに渡航し、子供たちに1個ずつ渡し「生活の写真を撮る」ように依頼した。

撮り切った「写ルンです」は1個千円の報酬で計2700枚を買い取り、帰国後にモノクロで現像。賛同するアーティストに写真を提供し、今後、それぞれが自身の感性で手を加えてアート作品に仕上げる。

画家でもあるコシノさんのほか、気鋭のアーティストら16人が賛同。各地で展示販売会を行い、利益の50%を作者に、残り50%を現地に開設する写真家育成学校の設置・運営資金に充てる。

9月19~26日、高松市内のコワーキングスペース「BRIC」で行われた展示販売会。期間中には画家の鈴木掌(つかさ)さんによるライブペインティングも行われ、生演奏に乗って、子供たちが撮った写真の上に蛍光アクリル絵の具を使い40分ほどで象を描きあげた。展示販売会は来年2月から大阪でも開催される。

ルワンダは民族対立、内戦、虐殺を経て、IT振興や海外からの投資で急速な経済成長を果たし「アフリカの奇跡」とも呼ばれるが、新型コロナウイルス禍で貧窮が広がっている。

香川さんは当座の生活資金を援助しつつ「お金を与えるだけでは本当の支援にはならない。子供たちが個々の才能に応じて手に職をつけ、一人でも多く経済的に自立し、評価されることで自己肯定感を経験してほしい」と話す。

ルワンダの子供の写真とコラボしたコシノヒロコさんの作品=9月19日、高松市の展示販売会
ルワンダの子供の写真とコラボしたコシノヒロコさんの作品=9月19日、高松市の展示販売会
独学で写真家に

「Brave EGGs」(東京)の社長として「アート×社会課題プロジェクト」を掲げる、経営コンサルタントの顔も持つ香川さん。

会社員時代の平成25年に難病の特発性血小板減少症を発症し、その後、薬の副作用で大腿(だいたい)骨の一部が壊死(えし)。「死はいつ来るか分からん。自分のやりたいことだけをやって生きよう」と考えるようになった。

自転車やトライアスロンが趣味の体育会系人間だったが、29年にカメラマンとして活動開始、翌年に独立・起業した。

今年から京都芸術大学の通信教育部写真学科で学び直している。写真家として「生々しいもの、人の命にかかわるもの、人の魂がにじむものを撮りたい」と話す。

展示販売会の会場で、「写ルンです」を構えるルワンダの子供の姿が大写しに=9月23日、高松市
展示販売会の会場で、「写ルンです」を構えるルワンダの子供の姿が大写しに=9月23日、高松市
写真家として嫉妬する

画家の鈴木さんが、現地の子供に絵を教えて作品を買い取り販売する支援活動をしていたことを参考に「写真でも支援活動を」と考えていた。デジタルカメラを渡すと転売される恐れがあり、思いついたのが「写ルンです」。

ルワンダの子供たちが撮ったのは、友達や家族の写った、ありのままの生活。「写ルンです」の特徴は、現像するまで何が写っているか分からないこと、デジカメのように即削除ができないこと。突然、ピンボケの歯ブラシやシューズが写っていることもあるが、香川さんは「一連の流れでみると面白い。写真家として嫉妬する一枚も」と、魅力を話す。

ライブペインティングで象を描きあげた鈴木掌さん(右)と対談する香川智彦さん=9月23日、高松市
ライブペインティングで象を描きあげた鈴木掌さん(右)と対談する香川智彦さん=9月23日、高松市

来年、首都キガリ近郊キミフルラで、写真家育成学校を開く見通しとなった。日本からのオンライン授業でプロカメラマンを育てる計画。来年はニューヨークなど海外でのアーティスト作品販売や、カンボジアやフィリピンで同様の活動を行うことも視野に入れる。

自らを「プロジェクト仕掛け人」と称し「故郷の高松市を舞台にアートを通じたプロジェクトをやりたい」と、夢は尽きない。(和田基宏)