書評

『日韓「歴史認識問題」の40年』西岡力著 反日の背後「政治工作」暴く

日韓関係はなぜ「史上最悪」の状態に陥ったのか。その理由はどこにあり、誰が仕掛け、悪化させてきたのかを、自らの闘争体験を踏まえ明らかにした。

著者の西岡力氏は朝鮮問題研究の第一人者であり、保守派の論客として知られるが、同時に、自他ともに認める「愛韓派」である。特に北朝鮮を敵と位置付け、行動する韓国の同志たちとの絆を強めてきた。従って次のように書く。

「心配なのは日本人の嫌韓だ。韓国の反日の背後にある政治工作を見ず、その理不尽さをすべて韓国人の民族性・国民性に還元する議論の拡散を、私は心配し続けている」

実際、日本国内の動きを含む「政治工作」を暴き、打ち勝つ体制を築かなければ日本は歴史戦に負け続けるだろう。戦線拡大が顕著に見られるからだ。

慰安婦問題一つ取っても、戦線は日韓という枠を超えている。中国共産党政権(以下中共)の工作抜きには語れない。アメリカにおける「韓国系」の日本糾弾騒動の背後には、常に中共系の「抗日連合会」がいるといっても過言ではない。中国人女性も日本軍の性奴隷にされ、殺害されたといった主張が国際的に発信されてきた。ロシアのプーチン政権も、反日歴史戦を本格化させている。

日韓の歴史認識問題は、朝日新聞や自虐史観にとらわれ北朝鮮にシンパシーを持つ「反日日本人」と、同じメンタリティーを持つ「反韓韓国人」が連携し、戦時労働者、慰安婦、朝鮮統治不法論などでプロパガンダを展開した。本来ファクトを盾に抵抗すべきはずの日本外務省などが、事なかれ的対応に終始したことで悪化の一途をたどった。本書が見事に論じる通りである。

もっとも、光明も見えてきた。韓国では「反日反韓史観」と戦う人々が出てきた。日本政府もある程度反論を始めた。しかし、慰安婦募集の強制性を認めた「河野洋平官房長官談話」の修正にはまだ躊躇(ちゅうちょ)している。

本書は、「誤読するように日本政府がみずから仕向けているとしか言いようがない」と談話の中心箇所について、具体的な「上書き」案を提示している。これすら恐れる政治が憲法改正などできるはずがないだろう。(草思社・2640円)

評・島田洋一(福井県立大教授)