オリックスの中嶋監督は「勇気をもらった1点」と表現した。3日行われたソフトバンク戦の二回、先頭の杉本が、中4日で先発してきた千賀が投じた159キロのストレートを右翼席へ運ぶ先制ソロ。難攻不落の右腕が今季初めて浴びた本塁打だった。
チームに衝撃の知らせが入ったのは前日の試合後。右手首付近の死球で退いた吉田正の骨折が判明したのだ。左太ももの故障から9月26日に復帰してから、5勝1分け。首位奪取の勢いをもたらした主砲の再離脱に、杉本は「連勝しているチームの雰囲気じゃなくなった」と振り返った。
シーズン終盤に向けてチームのスローガンは「全員で勝つ」。緊急事態にナインは奮起した。杉本の一発で流れをつかみ、四回はベテランのT-岡田、安達の連打で1点。五回は無死一塁から、吉田正に代わって先発出場の山足がバスターエンドランでチャンスを広げ、追加点につなげた。
先発の竹安は球を低めに集め、6回1安打無失点。四回2死三塁ではデスパイネの三塁線のライナーを宗(むね)がダイビングキャッチ。竹安は「宗にありがとうと言いたい」と感謝した。
先制パンチの一発に粘りの攻撃。そして丁寧な投球と好守。チーム一丸で戦って3-0で勝利し、これで引き分けを挟んで7連勝。杉本は「一番悔しいのは本人だし、代わりはいない。全員で勝つしかない」と力を込めた。 (鮫島敬三)