正論11月号

TBSねじ伏せて〝本質〟偽る共産党元板橋区議(元日本共産党区議団幹事長) 松崎いたる

東京・千駄ヶ谷の日本共産党本部
東京・千駄ヶ谷の日本共産党本部

※この記事は、月刊「正論11月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

「事実無根の卑劣なデマは絶対に許せません」(九月十日のツイッター)―日本共産党の志位和夫委員長が息巻いている。同日放送のTBSテレビの情報番組「ひるおび!」でレギュラーコメンテーター、八代英輝弁護士が同党について「まだ暴力的な革命というのを党の要綱として廃止していない」とした発言への反発である。志位氏は党広報部長に指示し、TBSに抗議し、番組としての謝罪と訂正を要求。同局はその日のうちに党側に次回放送での「謝罪と訂正」を約束している。

十三日放送の同番組では、局アナウンサーが「先週(十日)の放送で野党共闘のテーマを扱っている際に、日本共産党について『まだ暴力的な革命というのを党の要綱として廃止していない』という発言がありました。日本共産党の綱領にそのようなことは書かれていませんでした。訂正しておわびいたします」と謝罪。

発言した八代氏も「先週の私の発言についてですが、私の認識は閣議決定された政府見解に基づいたものでした。一方、日本共産党はそれを度々否定していることも併せて申し上げるべきでした。申し訳ありませんでした」と説明、謝罪している。

ところが共産党は八代氏のこの謝罪にも反発。小池晃党書記局長が「事実無根」「筋の通らない弁解」「謝罪になっていない」と批判(十三日)。十七日放送の同番組で八代氏が再度謝罪し、翌日の党機関紙『赤旗』が「反共デマ発言、八代氏謝罪」と成果のように報道している。

そもそも民主主義社会では放送・報道による政党への自由な論評が保障されるべきだが、批判を不服として政党がメディアに訂正や謝罪を要求し圧力をかけることは言論の自由への侵害である。

共産党からの圧力に屈し事実の検証もせず「謝罪・訂正」に応じたTBSも社会の公器である放送メディアの資格が問われる。

むろん間違いを指摘するのは公正な報道を担保するうえで大事だ。が、「八代発言」の何が「卑劣なデマ」なのか。共産党は「事実無根」というが八代氏は「閣議決定された政府見解」が発言の根拠と明確に述べている。綱領には「暴力的な革命」とは明記されておらず、その点で発言は事実と違う点もあった。だが視聴者にとって一番大事な「共産党の本質とは何か」をTBSはうやむやにしてしまった。

八代氏のいう政府見解とは、国会議員による共産党の動向に関する質問主意書に政府が閣議決定のうえ国会に提出された答弁書のことで、「(共産党は)日本国内において破防法に規定する暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、いわゆる『敵の出方論』に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識している」とある。今年三月と六月にも同様の答弁書がある。

政府答弁書に異論があれば、政府に堂々と反論して撤回を求めればいい。だが共産党は「デマ」と騒ぐだけだ。公安調査庁の調査に違法性、違憲性があるなら、訴訟を起こして法的な決着をつければいい。それも避けて、政府見解を紹介したテレビ局や出演者を攻撃する。筋が通らないのは共産党のほうだ。

実は八代氏の発言前々日、〝もう『敵の出方』とは言わない〟と志位委員長は言い出していた。

「『敵の出方』という表現だけをとらえて、日本共産党が、あたかも平和的方針と非平和的方針の二つの方針をもっていて、相手の出方によっては非平和的方針をとるかのような、ねじ曲げた悪宣伝に使われるということで、この表現は、二〇〇四年の綱領改定後は使わないことにしていることを明らかにしました。この表現は使わないことを、中央委員会総会の決定としても、明確にしておきたいと思います」(九月八日、第三回中央委員会総会への幹部会報告)。

「敵の出方」論とは、共産党が革命による国家権力の移行形態を説明する際に使ってきた用語、理論だ。共産党が主導する革命が、暴力革命の形態になるか、平和的な形態になるかは、共産党の側が決めるのではなく、「敵」である反革命勢力(既存の権力側)が、革命に武力その他の強制力を使って抵抗するのか、それとも無抵抗のまま革命を受け入れ、権力を引き渡すのか、という「敵の出方」次第で決まると説明されてきた。

もともと「敵の出方」論は、共産党の主観的な方針が平和的だろうとなかろうと関係がない。自分たちでは決められないから「敵」がどう出るかが問題にされるのである。だから志位委員長が「敵の出方」という「表現は使わない」と表明し「平和的方針をとる」と宣言したところで、革命を目指す限り、問題は何も変わらない。

私は日本共産党に「暴力革命の党」と批判する方法にはあまり賛成できない。「暴力革命」が多くの人が連想するフランス革命やロシア革命のような武力で権力を奪取することならば、日本共産党に武装蜂起できる実力も条件も皆無だからだ。手段を持たない共産党に「暴力革命を起こそうとしている」と指摘してもリアルな批判にならないし、ならば「政府のデマ」という共産党に共感が広がる理由にもなりかねない。しかし、暴力革命を指向してなくても革命を本気で考えれば「暴力」について本気で考えざるを得ないのだ。

革命の本質に暴力ありき

志位委員長は「革命」について次のような説明を試みている。

「なお『革命』といっても恐ろしい話では決してありません。私たちは、世の中の仕組みを大本から変えるという意味で、この言葉を使っています。しかも、過去の世界史のさまざまな『革命』とは違って、選挙で多数を得て進めることを明確にしています。一部に『共産党は革命政党』だといって〝恐ろしい政党〟だと印象づけようとする攻撃がありますが、これはまったく成り立つものではありません。だいたい『革命』という言葉は、たとえば『産業革命』、『科学技術革命』というように普通に使われているではありませんか」(二〇二一年八月四日、党創立九十九周年記念講演)。

「革命は恐ろしくない」というが、過去の「革命」が暴力を伴っていた事実は志位委員長も否定できない。しかも、国家、社会、経済といった「世の中の仕組みを大本から変える」ことと、産業、技術、科学の分野での進歩を意図的に混同させるのは、悪質なごまかしと言わざるを得ない。

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「正論」11月号 主な内容

【特集 悪夢の民主党政権を忘れるな】

国民が招いた日本の危機 ジャーナリスト・国家基本問題研究所理事長 櫻井よしこ

「小石河連合」なら保守は消滅か フロント・アベニュー 麗澤大学教授 八木秀次

国民政党とは八方美人にあらず 政界なんだかなあ 産経新聞政治部編集委員兼論説委員 阿比留瑠比

政治停滞打破する統治機構改革を 慶應義塾大学教授 松井孝治

脱デフレ実現の決意表明せよ 経済快快 産経新聞特別記者 田村秀男

正当に評価されない「仕事師内閣」の実績 産経新聞編集局編集長 佐々木美恵

新連載「元老の世相を斬る」 選挙は「看板」で戦うものじゃないよ 元内閣総理大臣 森喜朗

脱炭素で国家滅ぶ 電気料金増は製造業つぶし 一般財団法人「産業遺産国民会議」専務理事・産業遺産情報センター長 加藤康子

皇室の存亡担う新内閣の重責 君は日本を誇れるか 作家 竹田恒泰

【特集 カブール陥落】

邦人救出阻む憲法の改正を 東洋学園大学客員教授・元空将 織田邦男

アフガニスタン脱出記 阿鼻叫喚の11日間 産経新聞アフガン人通信員 ズバイル・ババカルヘイル

米軍撤退で得するのは誰か インド政策研究センター教授 ブラーマ・チェラニー

逃げ足の速さにみる中国の深い浸透 ジャーナリスト 濱本良一

ユーラシア大陸のへそ アフガニスタンを知る 聞き手 本誌編集長 田北真樹子

拓殖大学海外事情研究所客員教授・元駐アフガニスタン大使 高橋博史

軍事優先が招いた自立喪失の悪循環 元駐アフガニスタン大使 高橋礼一郎

「インド太平洋憲章」日本主導で起草を 大阪市立大学名誉教授 山下英次

真実の上に立つ日韓関係を モラロジー道徳教育財団道徳教育研究センター教授・麗澤大学客員教授 西岡力

TBSねじ伏せて〝本質〟偽る共産党 元板橋区議(元日本共産党区議団幹事長)松崎いたる

【特集 中国で起きていること】

「在日ウイグル人証言録③」天の下の巨大な牢獄 評論家 三浦小太郎/証言1 エイティカル(仮名)「生き残るための苦渋」/証言2 ムハマット「変わり果てた母」/証言3 タランチ「収容所の外の牢獄」

習近平が始めた第二の文化大革命 評論家 石平

北戴河会議で異変か 〈チャイナ監視台〉 産経新聞台北支局長 矢板明夫

偉大なるシナ文明を抹消する中共政権 明星大学名誉教授 山下善明

【特集 武漢ウイルスとの闘い】

「天然起源」主張する生命科学者を監視せよ 筑波大学システム情報系准教授 掛谷英紀

台湾が鎮圧に成功したワケ 『国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦』著者 藤重太

実体を伴わなかった五輪の「安心・安全」 東京オリンピック都市オペレーションセンター医療統括、杏林大学医学部救急医学主任教授 山口芳裕

複合災害にも対応できる感染症と天災に強い社会を ニューレジリエンスフォーラム第1次提言を公表 事実に基づくDV認定を 長崎大学准教授 池谷和子