近ごろ都に流行るもの

「サービス介助士」 パラでも活動 障害者に適切な声がけを

平野恵さんを接客する谷地裕壽さん。視覚障害者には声かけと、商品に触れてもらうことが大切だ=いずれも東京都渋谷区の東急ハンズ新宿店(重松明子撮影)
平野恵さんを接客する谷地裕壽さん。視覚障害者には声かけと、商品に触れてもらうことが大切だ=いずれも東京都渋谷区の東急ハンズ新宿店(重松明子撮影)

盛り上がった東京パラリンピック。障害者を身近に感じた人も多いと思うが、実際に街で白杖や車いすの人が困っていたら、どう接したらよいのだろう? 無視は論外としても、障害者は何もできない、逆に特殊能力を持っている…などの誤解に基づく極端な対応も見られる。実態とニーズが理解されていないことが問題だ。答えの一つを「サービス介助士」という民間資格に求めてみたい。鉄道や小売り・流通など1千社以上が導入。有資格者は累計20万人に迫り、東京パラでのボランティアなど、活動の場も広がっている。

特殊聴力? 善意の誤解も

「200メートル先の声が聞こえるんですか?」

視覚障害者の平野恵さん(25)は初対面の人にこう聞かれた。ブラインドサッカーなどパラ競技の感動の余波なのか? 視覚障害者は特別な聴覚を持つとの誤解。「障害者、あるあるです」と苦笑する平野さん。手引きをしてほしい場面で、「手の鳴る方へ」と案内されたこともある。

「障害者に対するさまざまな誤解を解き、ありのままを知ってほしい」。その思いで今の仕事を選んだ。

大学卒業後、サービス介助士の教習や検定を運営する公益財団法人「日本ケアフィット共育機構」(東京都千代田区)に就職。音声ソフトでスマートフォンやパソコンを使いこなし、事務や教習のアドバイザーを務めている。

増加する導入企業

サービス介助士は、高齢者の社会参加促進を目指して平成12年に創設。近年はSDGs(持続可能な開発目標)が掲げる「誰一人取り残さない」社会づくりの一環として、導入する企業が増えている。

その一つ。東急ハンズ新宿店(渋谷区)を平野さんと訪ねた。「ご案内スタッフ」の谷地裕壽さん(59)が、サッと腕を出して誘導する。

売り場を手引きで案内。「通路が狭くなります」など、声をかけながらの自然な介助(重松明子撮影)
売り場を手引きで案内。「通路が狭くなります」など、声をかけながらの自然な介助(重松明子撮影)

1人暮らしの平野さんは「キッチンのシンクの下に、お皿を収納する仕切りがほしい」と要望。谷地さんは複数の商品をパッケージから取り出して、手を添えて説明する。「この棒の間にお皿を縦に置きます」「あー、そうですね」

触れてもらう。状態を言葉で伝える。接客はコロナ禍でやりにくくなったが、感染対策を徹底し、「お客さまの意思と安全を確認しながら、必要な手助けをしています」と谷地さん。

東急ハンズでは12年前から、役職定年となった社員の商品知識と接客スキルを生かし、サービス介助士の資格を取得したうえで売り場に配置している。現在直営の33店舗に38人。グリーンのジャケットが目印だ。谷地さんもその一人で「教習の実技体験が非常にためになった」と語る。

「車いすに乗る、押す。握力が弱まる手袋を付けての食事。白内障の視界を体験…。こんなに大変なんだと気持ちを共有でき、サポートにも自信が持てるようになった。老親の世話など実生活にも役立ちます」

状況に応じた声がけを

資格取得には平均3カ月ほどかかる。関連法規を含め、障害や加齢への理解と状況に応じた接遇をテキストで学び、課題提出、丸2日間の実技教習を経て、筆記・実技試験を受ける。

「業務上の取得が大半ですが、資格を生かした活動を望む意欲的な方が多く、東京パラでも多数がボランティアに参加した。普段からスポーツ大会やイベントなど、さまざまな機会が用意されています」と、同機構経営企画室の佐藤雄一郎室長(36)。

東京パラで金メダルを獲得した全盲選手を以前取材した際、記事にできなかった言葉を思い出した。「通勤の乗換駅で、駅員さんがいつも黙って後をつけてくるのがわかる。気持ちはありがたいが、やりすぎ」

ホームや通路で。近くに居合わせた人が危険を知らせるなど、状況に応じた声がけをするのが当然の社会になれば、駅員の負担も事故も相当減るはずだ。

共生社会を創っていくのは資格や障害の有無を超えた、人々のコミュニケーションの力だと感じている。(重松明子)