婚活アプリの詐欺師 嘘バレても「本気だった」

事態が急変したのは、付き合い始めて1年弱がたった昨年の春。「会社の研修でコロナ陽性者が出て濃厚接触者になった」と告げられたのを最後に、連絡が取れなくなったのだ。

心配した真里さんは、川上から聞いていた勤務先に連絡。だが、電話口の相手は「そうした人物はいない」と言い、川上の住所が実在しないことも知った。

「私、もしかしてだまされてるんちゃう?」

川上の知人を問いただしたところ、名前や住所、職業まで全て噓だったことに加え、交際開始時には妻子持ちだったことも判明。さらに音信不通となった後、川上は罪を犯したとして警察に逮捕されていた。

裁判所も「詐欺」認定

真里さんは勾留先の警察署で川上と再会。「全部わかっている」。そう告げると素直に噓を認めた。「でもお前とは本気だった」。現実と慕情の間で悩み、真里さんはいったんは交際継続を決めた。だが、返済はすぐに滞り、釈放後に別の女性と同棲(どうせい)していたことも判明。関係は完全に破綻した。

真里さんは、借金の返済と慰謝料など約660万円の支払いを求めて大阪地裁に民事訴訟を起こした。

地裁は今年9月、「当初から婚姻を前提とした誠実な交際をする意思がなかった」「詐欺の故意があった」と認定し、真里さんに約506万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。当初、専門家からは「結婚詐欺は立証が難しい」と言われたが、口座上の送金記録やLINEのやり取りが証拠として残っていたことが幸いした。

「普通に生きてきて、結婚詐欺に遭うなんて思わないですよね」

川上と縁を切った今、真里さんはそう嘆息する。

「結婚したら、きちんと返す」。信じたかったが、膨らむ一方の借金と反比例するようにデートの回数が減り、一度として自宅に呼ばれなかったことも今思えば不可解だった。

真里さんは裁判での勝訴をかみしめつつ、同じような立場の被害者には「証拠を残しておくことが何より大切。泣き寝入りはしないで」と呼びかける。川上については詐欺罪で刑事告訴したといい、「世の中なめていたら、痛いしっぺ返しに遭うということを結婚詐欺師に知らせたい」と力を込めた。(杉侑里香)