【台北=矢板明夫】台湾の国防部(国防省に相当)は2日、計38機の中国軍機が前日の1日に台湾の防空識別圏(ADIZ)に一時進入したと発表した。昨年9月から中国軍機の動向を台湾側が公表し始めて以来、1日当たりのADIZ進入機数で最多となった。
この日は中国の国慶節(建国記念日)にあたる。祝賀式典に合わせ、中国軍として軍事力を誇示した形だ。台湾の空軍は軍機を緊急発進(スクランブル)させるなどして対応したという。
台湾の国防部によれば、中国軍機は1日、日中に25機が、深夜にかけて13機が、2回にわけて台湾の南西から南方の空域でADIZに進入した。
この日、確認された中国軍機は、戦闘機「殲16」28機と「スホイ30」4機、爆撃機「H6」4機、対潜哨戒機「運8」1機、早期警戒管制機「空警500」1機。
中国軍機による台湾ADIZへの1日当たりの進入数はこれまで、6月15日の計28機が最多だった。
台湾が9月22日に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を申請したことに対し、「台湾は自らの領土の一部」と主張する中国が強く反発していた。
また、英海軍のフリゲート艦「リッチモンド」が9月27日に台湾海峡を通過したことに対し、中国軍側は「台湾海峡の平和と安定を破壊する」と非難声明を発表している。
中国は台湾と国際社会の連携強化を阻止しようとしており、今後もさらに台湾への軍事的圧力を強化する恐れがある。
1日で計38機もの中国軍機が台湾のADIZに進入したことについて、台湾の蘇貞昌行政院長(首相)は2日、記者団に対し「中国は武力を乱用して戦争を企て、地域の平和を破壊しようとしている。そのやり方は国際社会からますます軽蔑される」と述べ、中国側の動きを強く牽制(けんせい)した。