【ビブリオエッセー】これは私たちの物語 「二番目の悪者」 林木林・作 庄野ナホコ・絵(小さい書房) - 産経ニュース

メインコンテンツ

ビブリオエッセー

これは私たちの物語 「二番目の悪者」 林木林・作 庄野ナホコ・絵(小さい書房)

皆さんは人から噂を聞いたとき、そのまま信じるだろうか? それとも自分で確かめていないことはうのみにせず、本当のことを確かめようとするだろうか?

絵本なので気軽に手に取ったが、読み進むと物語の動物たちがまるで私たちの日常を見ているようで気になり、結末まできて、ぞっとした。

舞台は動物たちの国。王様になりたかった金のライオンはあるとき、心のやさしい銀のライオンが候補に挙がっていることを知る。銀のライオンこそ王様にふさわしいと。そこで金のライオンがある策略を思いついた。

「噂」はどこにでもころがっている。ウイルスのこと、国々の情勢のこと、友だちや先生のこと。「~らしいよ」「~なんだってね」。日常的に耳にする言葉だ。

さて金のライオンは願い通り王様になったが国は最悪の状況になる。動物たちはこう言い合った。「僕は聞いた話を、友達に教えてあげただけなんだよな」「私だって、なんとなく心配だったから、家族に知らせただけだわ」「おいらだってちょっと気になって、メールを転送しただけさ」…。同じようなことを私たちもやっていないだろうか。何も確かめず、ただの噂をなんとなく伝えてしまう、ということを。

動物たちの一部始終を見ていたのは、空にうかぶ真っ白い雲だけ。雲はこう言う。「噓は、向こうから巧妙にやってくるが、真実は、自らさがし求めなければ見つけられない」

私たちは今、インターネットを自由に使え、本当かどうかわからない情報に囲まれている。SNSやメールで飛ぶように広がる情報。

最後の言葉が心に響く。「誰かにとって都合のよい噓が世界を変えてしまうことさえある。だからこそ、なんどでもたしかめよう」

東京都調布市 原田裕理(13)

投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556―8661 産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。