速報

速報

日大の田中英寿理事長逮捕、脱税の疑い 東京地検

点滴連続死初公判詳報

(3)「患者の家族から責められ過食、睡眠薬も」弁護側指摘

久保木愛弓被告
久保木愛弓被告

=(2)に戻る

《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入し中毒死させたとして、患者3人に対する殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の初公判が続いている。検察側の冒頭陳述は30分ほどで終わり、弁護側の冒頭陳述が始まった》

《弁護人が説明を始めると、久保木被告は顔を上げ、要点のスライドが映し出されているとみられる目の前のモニターに視線を向けた。金縁メガネをかけ、グレーのスーツに身を包んだ姿は、逮捕前に報道陣から直撃取材を受けていたころの面影はなく、弁護団の一員のようにも見える》

弁護人「事実に争いはなく、この裁判の争点は責任能力の程度と量刑です」

《裁判員に向けてこう呼び掛けた弁護人は、まず責任能力について、意見が対立する2人の医師の所見を読み上げた》

《起訴前に鑑定した医師は久保木被告について、生まれつき強いこだわりを持つなどの特徴がある「自閉スペクトラム症」ではあるものの、犯行に影響は及ぼしていないと診断。これに対し、起訴後に弁護側の求めで鑑定を行った医師は、犯行当時、被告は統合失調症に罹患(りかん)し、心神耗弱状態であったなどと診断したことが紹介された》

《弁護人は次に、久保木被告の経歴について話し始めた。平成17年4月に看護専門学校に入学し、20年4月に看護師の国家試験に合格。横浜市内の別の総合病院に就職し、23年からは障害者病棟に配属された。ここで患者の死に接し「自分の看護が行き届かずに患者が死んだ」と悩むようになる。26年4月、抑鬱状態が続き休職。その後復帰して系列の診療所で働き始めたが、27年4月に退職し、同5月から大口病院で働くことになった》

《その後、28年3月に大口病院で患者が死亡した際、久保木被告は家族から「この看護婦が殺した」と罵倒されたという。弁護人は、被告がショックを受け、菓子を過食したり、睡眠薬を大量摂取するなどの行動を取るようになったと明かした。被告はしきりに目をしばたたかせ、弁護人の説明を聞いている》

《そして、同年9月に犯行に及び、その年の末にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。30年に逮捕された後、鑑定入院した際には、同じように入院していた患者の耳に洗剤を入れる問題行動を起こす。2度目の鑑定入院中だった令和元年9月にも、便器に雑誌を詰め込んで部屋を水浸しにする問題を起こした。同年12月には、収容されている横浜拘置支所内で「殺してやる」という幻聴により、壁を蹴り続けるなどした。法壇に横一列に座る裁判員らは、弁護人の説明に熱心にメモを走らせている》

弁護人「被告の責任能力をどう判断するかには、7つの着眼点がある。動機了解の可能性があったか、犯行に計画性があったかなどを考慮していただきたい。冒頭陳述の要旨に7つの着眼点についてメモ欄を設けたので、利用してほしい」

《弁護側は、裁判員らにこう呼びかけると、続いて2つ目の争点である量刑についての説明を始めた。ここでも、異なる2人の医師の所見を挙げ、一方の医師が、亡くなった被害者3人のうち興津朝江さん=当時(78)=は点滴に消毒液を入れられたことによる中毒死だが、西川惣蔵(そうぞう)さん、八巻信雄さん=ともに同(88)=は中毒に加え、肺炎など元々の疾患が死因だったとしたことを指摘した》

《最後に弁護人は、久保木被告がどうして犯行に及んだのか、今後、父親の証人尋問や本人への被告人質問を通じて明らかにしていくとした。冒頭陳述が終わると、裁判長は今後の公判日程を読み上げ、休廷を告げた。被告は席に座り、傍聴人が退廷する様子に時折、目をやっているように見えた》

=(4)に続く