主張

南北通信「再開」 北の戦術にだまされるな 

北朝鮮が、硬軟両様とも受け取れそうな対外姿勢を示している。だが、日本をはじめ国際社会はだまされてはいけない。北朝鮮に核・ミサイル戦力を放棄したり、日本人拉致被害者を解放したりするつもりがないのは明らかだからだ。

金正恩朝鮮労働党総書記は9月29日の演説で、8月の米韓合同軍事演習を理由に遮断した韓国との通信を10月初旬に再開すると表明した。

米国に対しては、北朝鮮敵視の政策を変えていないと非難した。9月には、長距離巡航ミサイルや鉄道機動ミサイル連隊による弾道ミサイル、極超音速ミサイルをそれぞれ発射したと発表した。

南北間の通信回復の表明を軟化の兆しとみなすことはできない。北朝鮮が米韓離間をもくろみ、核・ミサイル戦力の強化に走っているにすぎない。

北朝鮮の対外方針は極めて単純だ。核・ミサイル戦力を強化してその保有を米国や国際社会に認めさせることと、在韓米軍を撤収させることだ。米国からの軍事的圧力や国際社会による経済制裁を弱め、韓国などから経済支援を得ることや、核・ミサイル戦力開発の時間稼ぎをねらっている。

金総書記は「(バイデン米政権の)われわれに対する軍事的威嚇と敵視政策は少しも変わっていない」と述べ、米国が対話を求めているのは「敵対行為を隠す仮面だ」と切り捨てた。

北朝鮮は新型コロナウイルスや制裁で苦境にある。一見強気の態度だが、少しでも有利な立場で対米交渉をしたいだけだ。北朝鮮が遮断と再開を繰り返してきた韓国との通信は再開するのが当たり前で、評価する話ではない。

米政府は、北朝鮮による最近の弾道ミサイル発射を「国際社会に深刻な脅威をもたらしている」と批判した。北朝鮮の一連のミサイル発射が成功したかどうかは日米韓の防衛当局が分析中である。9月28日の「極超音速ミサイル発射成功」は疑わしい。開発の初期段階とみられる。ただし実戦配備されれば撃墜は極めて困難だ。

岸田文雄次期首相は、軍事、経済両面の圧力路線に復帰して核・ミサイル放棄を北朝鮮に強く迫るよう米政府に働き掛けるべきだ。自衛隊の迎撃能力整備に加え、北朝鮮のミサイル攻撃を阻止する力である敵基地攻撃能力保有を一日も早く決断してもらいたい。