第5波ピーク死者ゼロの墨田区 生きた連携 6波へ態勢強化

病床が逼迫(ひっぱく)し、自宅療養中の死亡事例が相次いだ今夏の新型コロナウイルス流行で、東京・墨田区は死者と重症者をほぼ出さずに第5波を乗り越えた。「若年の自宅療養者」に焦点をあて、行政、医師、医療機関、薬剤師らが連携してケアを展開し感染者の病状を把握。感染の有無が分かるまでの「疑似症病床」も活用した。区はインフルエンザとの同時流行が危惧される冬場の第6波に向け、すでに検査態勢の強化を図っている。

自宅療養の不安解消

「自宅療養中の軽症者が亡くなることを防ぐ。これを一つのゴールとしていた」

墨田区保健所の西塚至所長はこう語る。直前の第4波で自宅療養中の死者が出ていた関西の病院関係者を6月に招き、区と医師会、医療機関が講義を受けた。高齢者へのワクチン接種が進む中、西塚所長は「第5波では若い世代の自宅療養が増える」と考え、すぐに対策を練り始めたという。

自宅療養者の健康管理強化のため、区医師会、訪問看護ステーションとの連携のもと、職員を充実させ、健康観察チームをつくったほか、区薬剤師会とも連携し、解熱剤などの処方薬を配送する自宅療養支援薬局も整備した。薬や血中の酸素飽和度を計測するパルスオキシメーターを職員が直接自宅に届けるなど、コミュニケーションを密にして自宅療養者の不安解消に努めた。

早期に検査・診断ができる環境を整備したことが、スムーズな入院調整につながった。基本的に発症から1日での検体の採取を徹底。患者の診断は保健所と確実に連絡を取り合える医療機関に任せ、患者の持病など細かい情報も必ず保健所に知らせるよう要請した。西塚所長は「連携を深め、早めの対応を取れるようにして、自宅療養となった患者に目が行き届く態勢をつくった」と振り返る。

疑似症病床を活用

自宅療養者のケアを強化する一方、病床確保も独自の戦略が奏功した。

検査中で感染疑いのある患者を収容する「疑似症病床」の一部を「緊急対応病床」に整備し、人工透析中や呼吸不全となったコロナ患者に薬物療法や酸素投与を実施。緊急対応病床化で軽症者に対し、重症化を防ぐ抗体カクテル療法を行う1泊入院も可能にした。

また、妊娠中のコロナ患者らの受け入れ先を確保するため、区内の賛育会病院(地域周産期母子医療センター)の疑似症病床を周産期病床にした。

こうした取り組みを可能としたのは、区と医師会、医療機関の信頼関係にある。昨年7月からWEB会議などで毎週のように課題を共有し解決策を話し合い、情報を共有してきた。

「約1年間、病院同士が互いの動きや状況を把握しているため、区が依頼する前に『他院が大変だから、うちはこうした支援をしたい』と病院側が申し出てくれた」と西塚所長。今回、妊婦を受け入れた賛育会病院も「軽症の妊婦の対応なら協力できる」と応じてくれたという。

子供の流行懸念

第5波の状況が落ち着きをみせ、区は第6波への対策を進めている。

最大の懸念は保育園や学校で集団感染が発生し、ワクチン未接種世代の子供を介して家庭内に感染が広がることだ。区は保育士らへの接種を優先し、保健所が欠席状況を連日確認。感染対策を指導する専門の「学校感染防止対策チーム」も立ち上げた。

冬場のインフルエンザ流行で発熱者の増加が懸念される。検査態勢の強化が必須で、西塚所長は「現在、発熱例は多い日で350人程度。インフルで2、3倍に増えることも想定し、基本的に発症からは1日以内で検査できる態勢を維持したい」と語った。