岸田総裁、「3A」取り込み 衆院選へ党内基盤強化

派閥の会合で発言する麻生太郎副総理兼財務相。左は甘利明税制調査会長=2021年9月16日午後、東京都千代田区(春名中撮影)
派閥の会合で発言する麻生太郎副総理兼財務相。左は甘利明税制調査会長=2021年9月16日午後、東京都千代田区(春名中撮影)

自民党の岸田文雄総裁が甘利明税調会長を幹事長に、麻生太郎副総理兼財務相を副総裁にそれぞれ起用するのは、岸田氏を支える意向の安倍晋三前首相を含めた「3A」を取り込んで盤石ではない党内基盤を確立し、目前に迫った衆院選に万全を期す狙いがある。

岸田氏は、総裁選勝利に貢献した甘利氏について、早い段階から幹事長への起用を思い描いていた。総裁選の決選投票で岸田氏に多くが加勢した最大派閥の細田派(清和政策研究会)が幹事長ポストを求める動きもあった。しかし、最終的に側近らからの「幹事長は意中の人を据えるべきだ」との進言を受け入れた。

安倍、麻生、甘利の3氏は姓の頭文字から「3A」と呼ばれる。麻生氏は菅義偉政権も含め8年9カ月の長期にわたり政権の中枢を担ってきた。甘利氏は第2派閥の麻生派(志公会)に所属し、安倍政権でアベノミクスの推進や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉に携わった。

甘利氏は選対委員長として令和元年参院選を指揮した経験もあり、首相就任後ただちに衆院選に臨む岸田氏には心強い。甘利氏側近は「他派閥の領袖(りょうしゅう)クラスと渡り合えるのは甘利氏以外にいない」と語る。

ただ、不安要素もある。甘利氏は平成28年に金銭授受疑惑で経済再生担当相を辞任。今も与野党から「疑惑は晴れていない」との声があがる。岸田氏側は疑惑は清算されたと踏むが、総裁選で岸田氏と戦った陣営のベテラン議員は「甘利氏の説明に世間が納得するかどうかだ」と懸念を示す。

一方、岸田氏は衆院選の公約づくりを担う政調会長に政策通の高市早苗前総務相を起用する。総裁選で安倍氏は高市氏を支援し、決選投票で「1位・3位連合」を組んで岸田氏を後押しした。岸田氏の陣営関係者は「総裁選で高市氏の政策への理解力とコミュニケーション能力は圧倒的だった。岸田氏との政策の乖離(かいり)も感じない」と話す。

官房長官に安倍氏の出身派閥の細田派から松野博一元文部科学相を登用することにも安倍氏への配慮がにじむ。総裁選を争った河野太郎ワクチン担当相は党広報本部長とし、発信力の高さを活用したい意向だ。

現段階で党や政権中枢に岸田氏が率いる岸田派(宏池会)の議員は見当たらない。岸田氏は、自派よりも他派閥を尊重する「挙党態勢」の人事を背景に衆院選を制したい考えだ。(千田恒弥、永原慎吾)