コミュニティ「きっかけ」でも「共生社会」の可能性に気づき、実践したいという声が上がった。8月下旬に設けた「社会のみんなで支え合う“サポートのかたち”」というテーマには、さまざまな人との助け合いの経験談やアイデアなど92件が寄せられた。
障害者、高齢者、子連れや外国人、地域の人々など身の回りの人を思い、「声をかけ合う」「手助けして当たり前という世の中にしたい」という声が広がった。一方で、「ありがた迷惑にならないか心配」「声をかけるのに勇気がいる」と、ためらう人もいた。
支えられる側の意見もあった。車いすユーザーの女性は「いつも明るくお礼を言う」と気遣いを紹介。大腿骨を骨折し、松葉づえで通勤したことがある女性は「杖を持って歩く人が意外と多いことに気づき、見方が変わった」と投稿した。
「東京パラを経て『自分にもできることはないか』と多くの人の意識が良い方向へ変わった」。東京五輪・パラリンピック組織委員会アドバイザーであり、施設やサービスのバリアフリー化などを手がけるコンサルティング会社「ミライロ」(大阪市淀川区)の垣内俊哉社長は、こう見る。「環境整備面では世界トップ水準の日本で助け合いの心が広がれば、世界をリードする存在になれる」と、期待する。
バリアフリーをめぐっては、日本ではハード面とは対照的に「心のバリアフリーが不十分」だという。うまくサポートしたいと思うあまり、声をかけられず無関心を装ったり、過剰に手伝ったり。「障害者がどんなことに困るのか、障害者にどんな言葉をかけるべきかは、決して医療や福祉関係者のためだけの特別な知識ではない。知ることで、一歩を踏み出せる」とする。
こうした思いから同社は平成25年、「ユニバーサルマナー検定」を創設、多様な人を理解し、助け合うためのコツを伝えている。これまでに全国の10~90代の約13万人が受講、延べ600団体超が導入している。新型コロナウイルス禍でオンライン講座なども整え、地方在住者や高齢者も受講できる仕組みを作っている。
障害がある人への合理的配慮を企業に義務付けた、「改正障害者差別解消法」が5月に成立するなど共生社会をめざした法整備も進んでいる。
「1人の優しい声かけは障害者の社会参加につながる。支えられる側もまず感謝を示し、互いに歩み寄ることでより良い社会につながる。ユニバーサルマナーを広げ、皆さんの一歩を応援したい」としている。