【ソウル=時吉達也】韓国メディアは29日午後、自民党の岸田文雄前政調会長が新総裁に選出されたことをトップニュースとして速報した。2015年の日韓慰安婦合意当時の外相だったことを中心に岸田氏を紹介し、日韓関係の改善に向けては「期待と警戒」が交錯する反応を示した。
聯合ニュースは、岸田氏が自民党内で「韓日関係を重視する『ハト派』に分類される」と紹介。現政権などに比べ、「(日韓)関係改善に向けてより誠意ある接近をする可能性がある」との韓国専門家の分析を伝えた。
その上で、日韓合意に基づき設立された財団を韓国側が一方的に解散するなどした経緯から「(岸田氏には)自らが労力をかけた合意を履行しない韓国政府への不満もうかがえる」と指摘。自民党長期政権体制では首相の交代だけで大きな変化が起きることは考えづらいことも踏まえ、「冷え込んだ両国関係に劇的な変化を期待するのは難しいとみられる」と結論付けた。
これに対し、朝鮮日報は岸田氏がアジア外交を重視する自民党派閥「宏池会」の系譜に連なると紹介。今秋の衆議院選挙などに勝利し政権運営が安定すれば「将来的に韓日関係の改善も期待できる」とした。
中央日報は選挙戦前の世論調査で、岸田氏の支持率が河野太郎ワクチン担当相、石破茂元幹事長に次ぐ3位だった点に着目。「『国民が望む首相』ではなく、『国会議員が望む首相』が選ばれた」と論評した。