政府は28日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言などを9月30日の期限で全面解除する方針を決めた。10月以降は次期政権のもと、社会経済活動の正常化に向け、ワクチンの接種証明などを活用した行動制限の緩和が本格化する。ただこの冬にも感染の「第6波」到来が予想されており、医療提供体制の強化も並行して進める。
政府が宣言解除から約1カ月の移行期間の後に、感染対策と日常生活を両立させる方策の柱と位置付けるのが、2回接種の接種済証か検査の陰性証明の提示を求める「ワクチン・検査パッケージ」の仕組みだ。
政府は28日のコロナ対策本部で、今後、宣言を再発令した場合でも、同パッケージを活用して午後9時までの営業や酒類提供を認める方針を決めた。イベントや旅行でも活用する考えで、近く、大阪府など全国の13自治体などで効果や課題を洗い出す実証実験がスタートする見通しだ。
イベントではプロ野球などのスポーツ、音楽ライブ会場での活用が見込まれる。西村康稔経済再生担当相は27日、関係者と相次ぎ意見交換した。QRコードで来場者の体調を追跡調査できる仕組みの導入も検討している。
ただ、導入にあたってはコスト負担や手続きの煩雑化など課題も山積する。飲食での活用も簡単に進みそうにない。「飲食店では、いちいち店に来るのに検査したりということは『とてもかなわない』という意見が強い」(コロナ分科会の尾身茂会長)といい、業界の慎重論が強いためだ。
一方、専門家は感染再拡大を警戒する。28日の基本的対処方針分科会では、東京都などは全面解除でなく「蔓延防止等重点措置」で措置を続けるべきだとの意見も出た。政府も昨年同様に11月ごろからの再拡大もあるとみており、臨時医療施設の態勢強化など備えを進める。
「ワクチン接種率が65%を超えた欧州でも1日2、3万人の感染報告がある。日本でもこの冬に起こりうる」。西村氏は分科会でこう語り、必要に応じ対策を再強化する考えを示した。(千葉倫之)