勇者の物語

人気者アニマル派手な演出 実はシャイで優しく 虎番疾風録番外編319

プレゼントされたまわしを締めてゴキゲンの阪急のアニマル
プレゼントされたまわしを締めてゴキゲンの阪急のアニマル

■勇者の物語(318)

マウンド上で「ウオオォ」と雄叫びをあげオーバーアクション。藤田の顔にパンチを浴びせ、ベンチでは選手をヒザの上に担ぎ上げ、ドラム代わりに背中やお尻を叩く。どうしようもない〝暴れん坊〟のように見えるアニマルだが、実際はシャイでかわいい男。

「グラウンドで暴れるのは照れ隠し。ホンマは気の優しい男でなぁ、登板前に緊張して震えとるのをよう見たよ」

平成25年4月、アニマルが腎不全で亡くなったときの上田利治の回想である。

仲良くなったアニマルがある日、こんなことを言ってきた。「オレに日本語を教えてくれないか?」。もちろんOK。ただし、筆者を「お兄ちゃん」と呼ぶなら―という条件付き。アニマルは1958年9月11日生まれ、筆者より2つ年下だった。

初めは「ありがとう」「ごめんなさい」「おどろいた」ぐらいだったのが、シーズンの終わり頃には通訳なしで十分会話ができるようになった。

ある日、「アメリカのフィアンセには毎日、電話しているんか?」と拙い英語と日本語で質問すると、顔を真っ赤にしてこう答えた。

「彼女とは当分、結婚しない。だって、オレはいま野球と結婚している。彼女とは野球と離婚してからだ」

見かけによらず真面目な男だった。普通、新外国人選手を迎えるにあたって球団が一番神経を使うのが「女性問題」。特に独身となれば、トラブルを起こさないよう細心の注意を払う。57年、阪神にグレッグ・ジョンストンという選手がいたが、彼は女性を見るとカタコトの日本語で「ケッコンシマショ」と話しかけていたという。

「その点、アニマルは真面目やった。それに日本が好きでなぁ。箸の使い方もうまかったし相撲が好きで〝まわしはどこに行ったら買えるんだ?〟と、よう質問されたわ」とは福本豊の思い出。

アニマルは入団当初、色紙に英語とカタカナで「アニマル」とサインしていた。それが5月下旬ごろから漢字でサインするようになった。実は教えたのはフクさん。「漢字でサインしたいというから、ほんなら義理と人情の日本の心を―と2人で考えたんや」

アジアの「亜」。仁義の「仁」。そして日の丸の「丸」。人気者「亜仁丸」の誕生である。(敬称略)

■勇者の物語(320)

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