【ビブリオエッセー】小説と現実を読み比べると 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック著 浅倉久志訳(ハヤカワ文庫) - 産経ニュース

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小説と現実を読み比べると 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック著 浅倉久志訳(ハヤカワ文庫)

この本を読み終えた時、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかよく分からず、落ち着かない消化不良な思いとともに、それでも難解な文章と物語をなんとか読み終えた達成感をじわじわと感じた(毎日じりじりと進んだり、時には後退したり、話の流れが分からなくなって50ページも前に戻ったり…大変な時間だった)。

映画『ブレードランナー』の原作で第3次大戦後を描いたSF小説だ。でも、いざ感想といっても正直、うまく内容を自分のものにできていない。著者が1960年代に想像した未来である90年代は実際とは大きく異なる。大きな世界戦争はなくアンドロイドや模造動物もない。その代わり、現実世界とは別の仮想世界であるインターネットの世界が急発展した。

主人公は火星から逃亡してきた賞金首のアンドロイドたちを処分していく。ここに登場するアンドロイドは今の非現実世界であるネット上に置き換えると、アバターのような存在として実現しているのかもしれない。

小説の中のアンドロイドはあまりに人間に酷似し、自らが人間かアンドロイドかを判別できなくなっているが、今や私たちもネットの世界では生身の肉体を持つ必要がなくなっている。ネットの内部がリアルなのか外部がリアルなのか、分からなくなってきた。そう考えれば著者が思い描いた未来はこの21世紀に実現しているといえなくもない。

人間は今後、生物学的には死んでもネットの世界では生き続けるのかもしれない。そしてAIが進化すれば、人間も生物としての死を超えてしまうのだろうか。実は小説よりも現実の方が恐ろしい状況にあるのかもしれない。現実と読み比べ、ぞっとした。

東京都調布市 渡辺悠太(13)

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