酒の蔵探訪

お福酒造(新潟県長岡市) 40年の経験と技光る味

仕込み作業をするお福酒造の杜氏、中野義一さん(本田賢一撮影)※写真撮影のためマスクを一時外しています)
仕込み作業をするお福酒造の杜氏、中野義一さん(本田賢一撮影)※写真撮影のためマスクを一時外しています)

日本酒の質を競う4月の越後流酒造技術選手権大会で、お福酒造(新潟県長岡市)の吟醸酒「お福正宗」が120点の出品の中から1位に輝いた。杜氏(とうじ)の中野義一さん(73)は「口に含んだ瞬間、米の良い香りが広がり、さわやかな味わいが口の中に残る。そんな酒に仕上がったことが評価されたのではないか」と振り返る。

こうした酒質は偶然できたものではなかった。昨年は暑い日が続き、原料の酒米の粒が硬めになっているとの情報を米生産者から得た。そこで米を水につける時間を微調整し、米に硬さが残らないように工夫をした。「硬い米からは良い香りの酒はできない」(中野さん)からだ。中野さんが酒造りに携わるようになって40年以上。これまで積み重ねてきた経験と技が1位の背景にある。

実は、今の日本酒造りで主流になっている「速醸(そくじょう)もと」と呼ばれる技術を発明したのもこの酒蔵である。これは、日本酒造りの土台となる液体(酒母(しゅぼ))を造る工程で、人工の乳酸菌を入れて雑菌などの繁殖を抑えると同時に、アルコール発酵に必要な優良酵母を大量に入れて純粋培養を図るというものだ。創業者で醸造研究家の岸五郎氏がこの技術を発明し、のちに体系付けられ、酒母を造るのにかかる期間が従来の半分の約2週間に短縮された。

お福酒造はこの技術をさらに改良し、10~11日間で酒母ができるようにしている。

明治30年の創業時から一貫して、飲むほどに幸福感を感じ、飲む人にも造る人にも福を招く酒をコンセプトに酒造りをしている。「お福酒造」の名前はそこから生まれた。

そんなお福酒造が造る酒は「甘口タイプで、まろやかな飲み口が特徴。女性にも人気がある」という。新潟の酒といえば、すっきりとした淡麗辛口が主流だが、「長岡市の山古志地区を中心に地元では甘口の酒を求める声が多い。地元を大事にした酒造りを行っている」そうだ。