久保田勇夫の一筆両断

競争社会としてのアメリカ

アメリカを強国たらしめている要因はさまざまであるが、経済面について言えば、それがユニークな競争社会であるということではなかろうか。現在のバイデン政権は「米国の超巨大デジタル企業には問題が多い」「独占禁止政策は大幅な手直しが必要である」などとしているが、経済は市場原理に任せるという思想に変わりはない。このことは今後もアメリカが競争社会であり続けることを示唆している。

なぜ、アメリカの市場経済、競争社会がこの国を格別強力なものにしているのであろうか。その一つの理由は、この国の競争が、われわれの想像を超える程激しいということではないかと思う。私がこのアメリカ社会の競争の、いわば「異常性」に接したのは、これもまた英国留学中の話である。英オックスフォード大学の2年目に、後にノーベル経済学賞を受けることになるMIT(マサチューセッツ工科大学)のロバート・ソロー氏が客員教授として訪れ、経済成長論の講義をした。

このアメリカから来た教授は、多くの学生を前に黒板一杯に数式を展開しながら、毎回、実に楽しそうに講義をした。曰(いわ)く、「これでこちらに来るのは2回目だが、自分はここが大好きだ。ここでは何の心配もなくこうして好きな学問ができる。アメリカにいるとそうはいかない。そこでは同僚たちが色々なことを仕掛けてくるので、それに心を配らなければならず、気が休まる暇がない」というのである。

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