「アラブの春」発火点のチュニジアで混乱拡大

チュニジアの首都チュニスで行われたサイード大統領への抗議デモ=18日(ゲッティ=共同)
チュニジアの首都チュニスで行われたサイード大統領への抗議デモ=18日(ゲッティ=共同)

【カイロ=佐藤貴生】「アラブの春」と呼ばれる2011年の反政府デモで独裁政権を打倒し、民主化の成功例とされた北アフリカ・チュニジアの首都チュニスで26日、サイード大統領に抗議する数千人規模のデモが行われるなど、同国の政治危機が拡大している。2カ月前に首相を解任して国会の機能を停止したサイード氏が最近、自らへの権力集中を強化する意向を示したことが発端だ。

サイード氏は22日、大統領令によって国を統治するとし、憲法改正を目指して委員会を設置する方針を表明した。現行の憲法は同氏の施策に矛盾しない範囲に限り有効だと述べた。

自らの政策について、サイード氏は「真の民主主義」を達成するのが目的だと主張し、国民から一定の支持を受ける。これに対し、主要政党は独裁が再び迫っているとして同氏を批判し、政権への抗議デモも発生している。

国会で最大多数を占めるイスラム主義政党「アンナハダ」は、サイード氏の行動を「独裁統治に向かう明確な兆候だ」として批判したものの、25日には同党指導部に対する不満から元閣僚や国会議員を含む百人以上が離党を表明するなど混乱が広がっている。

チュニジアは北アフリカや中東の強権体制が相次いで反政府デモで崩壊した11年の「アラブの春」の発火点となり、男女平等や表現の自由を認める新憲法が制定され、民主化が実現した。無党派の憲法学者だったサイード氏は19年の大統領選で民主的に選ばれ、大統領に就任した。

しかし、国会では多党乱立によって意思決定が難しくなり、経済低迷の打開策も打ち出せず、既存政党に対する国民の不信感が強まっていた。サイード氏が今年7月下旬に解任した首相の後任は決まっておらず、国会が再開される見通しも立っていない。

チュニスの男性記者(33)は「サイード氏が現在の国会の状態を刷新したいと考えていることは分かるが、彼の最終的な政策目標がよく分からない」とし、不透明な情勢は当面続くとの見方を示した。