仁徳天皇陵、墳丘の浸食進むも保全事業は道のり長く

仁徳天皇陵古墳(手前)などがある百舌鳥古墳群(奥は大阪湾)
仁徳天皇陵古墳(手前)などがある百舌鳥古墳群(奥は大阪湾)

10月から墳丘を囲む第1堤の発掘調査が行われることになった仁徳天皇陵古墳(堺市)。航空写真では優美で堂々とした姿をみせるが、墳丘は古代以来の地震などで大きく崩れ、周濠(しゅうごう)の水による浸食が進む。約1600年前に築かれた世界文化遺産を数百年、千年先までいかに伝えていくか。皇室の祖先をまつる神聖な場でもある陵墓の保全事業は、人類共通の歴史遺産の重みも加わって、世界が注視する。

墳丘の浸食は、宮内庁による平成7~10年の調査で明らかになった。墳丘縁辺部が長年の浸食で崖のように削られ、前方部、後円部とも少なくとも10メートル前後崩落していたことが分かった。

周濠の水位は最大4メートル近くあり、同庁は「周濠は深くて水が多いため浸食が進んでいる」とし、墳丘の護岸工事を計画。30年に第1堤の発掘に着手した。

第1堤を調査するのは、墳丘の護岸工事の際に重機などの進入路になるためだ。重機の重みで地下の遺構が壊される危険があり、30年の発掘では地表からわずか20センチほど下で築造時の石敷きが見つかった。重機を入れる際は、地表を土や鉄板で覆うなど保護措置が必要になりそうだ。

今後も第1堤の西半分や墳丘縁辺部の発掘を数年ごとに行い、護岸工事はその後になる。工事の際、周濠の大量の水を抜いたうえで底に堆積したヘドロの除去も必要で、作業の安全面の確保など課題は多い。宮内庁は「工法や着工時期は未定」としており、長い道のりになりそうだ。

大阪大大学院の福永伸哉教授(考古学)は「世界的に貴重な文化遺産として、浸食対策だけでなく、未来に向けて古墳全体をどう守っていくか考える必要がある」とし「事業は多大な費用が見込まれ、国民の理解は欠かせない。発掘現場を一部でも公開して古墳の重要性を実感してもらうことも必要」と指摘。長期にわたる事業だけに、陵墓保全の意味や調査成果など、国民への積極的な情報発信が求められる。(小畑三秋)