たばこと健康

運転中の喫煙、事故死率1・54倍

交通事故は、当事者だけでなく周囲の人々をも突然の悲劇に引き込む。21年前の平成12年には全国で95万件近い交通事故が発生し、9千人近い人が亡くなっている。悲劇を減らすため、道路交通法改正、道路の改良、信号機設置などの交通環境の改善や車の安全装備の開発などが行われてきた。そのかいもあって、表に示すように、20年後の昨年だと交通事故件数は約31万件、死者数は3千人を下回るまでに減少した。とはいえ、依然として37万人を超える死傷者が発生している。

交通事故死に関連して、東北大学から注目すべき研究結果が報道発表(東北大学プレスリリース平成30年7月4日)された。それによると、茨城県内の基本健康診査受診者9万7千人余りを平成5年から20年間追跡調査した結果、たばこを1日20本以上吸う男性は、たばこを吸わない人と比較して交通事故で死亡する危険性が1・54倍高いという。女性については喫煙者が少なく、同期間内に喫煙者の死亡交通事故も発生しなかったため、統計解析はできなかったとある。

運転中の携帯電話使用は道路交通法で禁止されているが、喫煙についての規制はない。だがイギリス、イタリア、台湾などでは運転中の喫煙は禁止されている。日本でも運転中の喫煙を禁止すべきとの意見もある。ある資料によると、たばこに火をつける動作は携帯電話の操作の倍以上の時間がかかるとある。

グラフは時速と1、2、5秒間で進む距離を示したものである。たばこを1本取り出し、口にくわえ、火をつける動作を5秒でできたとしても、グラフに示すように、時速100キロで走れば約140メートルも進む。その間はたばこに注意が集中し、前方注視もおろそかになる危険な行為である。落としたたばこを拾おうとして事故を起こした事例も少なくない。

たばこの先端から立ち上る煙(副流煙)や喫煙者が吐き出した煙(呼出煙)を吸わされる受動喫煙を、2次喫煙という。加熱式たばこでは副流煙はないかもしれないが、呼出煙は発生するため、2次喫煙は避けられない。産業医科大学の大和浩教授の研究によると、喫煙者の呼気からは喫煙終了後、40分以上にわたり有害物質が検出されるという。この研究報告を受けて、筆者の勤務する大学でも「45分ルール」を設け、喫煙後45分間のエレベーター利用や面談などを禁止した。客待ちのタクシー運転手がたばこを吸うことも止めたほうがいいと考える。