【となりのSDGs】バブル開発の名残、竹林を持続可能な街づくりの材料に - 産経ニュース

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バブル開発の名残、竹林を持続可能な街づくりの材料に

古民家を改装した食堂「三粒に種」に設置された竹あかり。あたたかい光が空間を照らした=大阪府岸和田市(永田直也撮影)
古民家を改装した食堂「三粒に種」に設置された竹あかり。あたたかい光が空間を照らした=大阪府岸和田市(永田直也撮影)

「竹取物語」に出てくる光り輝く竹さながらに、竹を加工したランプ「竹あかり」で街を照らそうという取り組みが、大阪府岸和田市で始まっている。日本人になじみ深い竹だが、最近は生活の周りから姿を消しつつある。その魅力をよみがえらせると同時に、山が竹の繁殖で荒れるのを防ぎ、生態系を守る効果も期待される。環境を守りながら街を活性化させる一石二鳥のプロジェクトを取材した。

懐かしさと楽しさを感じる竹あかり
竹あかりの作品を手に「人と人をつなぐ取り組みにしていきたい」と話す冨田健介さん=大阪府岸和田市
竹あかりの作品を手に「人と人をつなぐ取り組みにしていきたい」と話す冨田健介さん=大阪府岸和田市

岸和田市の山間部にほど近く、農村風景が広がる同市山直(やまだい)中町。夜の闇があたりを包んだ頃、古民家をリフォームした泉州野菜専門の飲食店「旬彩食堂 三粒に種」に竹あかりがともった。ほんのりとした光が店内を優しく照らし出す。

「この明かりが街に人を集め、交流が生まれるきっかけになれば」

同店を営む合同会社グルーン代表、冨田健介さん(36)はそう語る。

空き家が目立つ民家群を活用するための団体「Nut’sWork’s(ナッツ・ワークス)」を、知人の大工やアーティストらと昨年1月に結成。イベントを企画してきた。

そんな中で出合ったのが竹あかり。竹の側面にさまざまな模様でドリルを使って穴を開け、内部に電球を入れる。竹のどこか懐かしい温かみと、好きなデザインで光を浮かび上がらせる楽しさに魅せられた。

「害」から「宝」にするプロジェクト

竹あかりは全国的に地域活性化策として注目を集めている。北九州市では、小倉城一帯を竹あかりで飾るイベントが令和元年11月と昨年の10月~11月に開催された。

岸和田ならではの背景もある。中心部から南東へ約7キロの内陸部、南に神於山(こうのやま)を控える丘陵地(面積約159ヘクタール)で、市が来年3月にまちびらきするニュータウン「ゆめみヶ丘」だ。

ここは平成16年、市などによる開発計画がバブル崩壊で破綻。市がゼネコンなどから土地の無償譲渡を受け、新たな計画を進めてきた。住宅や企業の誘致だけでなく、区域の約半分はフクロウが生息する里山などの「自然保全エリア」として維持する。

同エリアの8割以上が竹林。竹は浸食力が強く、放置すると繁茂して生態系に大きな影響を与える。市丘陵地区整備課の川端秀之さん(37)は「自然エリアをどう活用していくかがまちづくりの鍵。何もしないと竹が道路にも倒れてきて生活に支障をきたすが、うまく活用できれば自然と融合した魅力あるまちになる」と話す。

そこで市は「竹資源の活用」を一つのテーマに、さまざまな活動を展開。和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」のジャイアントパンダに笹を食べてもらい、昨年10月の協定では幹の部分も工芸品などに有効活用することにした。

竹あかりはそうした活動の一環で始まった。市民の側で主体的に進めてくれる担い手を探していたところ、冨田さんが手を挙げたという。

持続可能なアイテム

冨田さんらが着目するのは、竹あかりがワークショップやイベントなどを通じて、継続的に取り組める活動だという点だ。「国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献しながら、人と人のつながりを生み出すことができる」

ナッツ・ワークスは、これまでに市内の道の駅や旧和泉銀行本店などで竹あかりを作るワークショップを開催。川端さんは「簡単な作業できれいな作品ができるため、親子でも気軽に楽しめる。約1年で竹が割れてしまうが、新しいものをつくるために何回も参加してもらえる」と指摘する。

来年3月に予定される、ゆめみヶ丘の「まちびらきフェスタ」では、竹を100%使ったステージを完成させる予定。各地で竹を使った建築を手掛けている滋賀県立大の学生がリーダーになり、地域住民が竹の伐採から参加する。

また、冨田さんは市と協力して、岸和田城で竹あかりをともすイベントを計画。「岸和田だんじり祭の献灯の枠に竹を使ってもらえないか」とのアイデアも温めている。来年は市制施行100周年。城や祭りといった名物とともに新たな「竹のまち岸和田」が生まれるかもしれない。

机やいす、自転車のフレームにも

竹は古来、かごやざるなどの日用品のほか、茶道具や生け垣など、さまざまな用途に利用されてきた。近年は竹の素材が持つ利点を生かした新しい製品開発が進んでいる。

中越パルプ工業(富山県高岡市、東京)は鹿児島県の工場で、国産の竹100%で独特の風合いの「竹紙」を生産する。封筒やはがきなどに使用され、なかでも「竹紙100ノート」は今年で発売10周年。同社は「書き心地は折り紙付き」と胸を張る。

テオリ(岡山県倉敷市)は地元産の竹を集成材に加工し、机やいす、鏡の縁などを作る。表皮から取った粉は塗料や入浴剤に、枝葉は粉砕して土壌改良材に活用して「竹循環型社会」への貢献を目指す。

竹は強さや軽さから、自転車のフレームにも使われている。Gerworks(大阪市住吉区)などのメーカーが生産、「自然素材で体になじみやすく、安定感がある」としてサイクリストの話題を呼んでいる。

長く丈夫な繊維構造に着目した大分大の衣本太郎准教授の研究チームは、竹から軽量で高強度、熱による変化も小さい素材「セルロースナノファイバー(CNF)」を製造。一方、静岡市は竹に含まれる乳酸菌や水分保持力を生かし、竹を粉末にして生ごみに混入することで堆肥をつくる取り組みを実施。農業や園芸での普及を図っている。(牛島要平)